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手放しで喜べないアーセナルの大勝。2つの不安要素と沈黙が続く男の存在とは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

454分間ノーゴールが続くエース


【写真:Getty Images】



 そして最も不安なのがガブリエウ・ジェズスである。今季からアーセナルの9番を背負う新エースはプレミアリーグの10節までに5ゴール4アシストと多くの得点に関与し、絶好調だったクラブを牽引していた。

 ところが11節からは沈黙が続き、今節終了時点で454分間も得点から遠ざかっている。同期間にアーセナルは得点力不足に悩まされており、ジェズスの不調がそのまま結果に直結している。

 だが、ジェズスは調子が悪いなりにも前線で起点となるなどして、チームに貢献できるタイプの選手だ。今節も得点こそ奪えなかったが、2アシストを記録。そしてタックル成功数もチーム単独1位の3回と、守備面での貢献度も高かった(データは『Sofa Score』を参照)。

 それでも気になったのが決定機の逃し方だ。この試合で同選手はチーム最多の7本のシュートを記録、そのうちの3本が枠内を捉えたが、最後までネットを揺らすことはなかった。

 ジェズスにとって、この試合における最大のチャンスは59分のシーンだろう。相手のパスミスをマルティン・ウーデゴールがかっさらい、ジェズスが完璧なタイミングでペナルティエリア内に侵入してシュートを放つも相手GKディーン・ヘンダーソンの正面にシュートが飛んでしまった。ゴールを決める以外は完璧だったこのシーンは、前所属のマンチェスター・シティで得点という結果が出ないときの彼の姿と重なった。

「チャンスには絡めている」と、ジェズスの今節の活躍はポジティブにも捉えられるが、調子を落としているストライカーへの最高の劇薬は「ゴール」であり、1ゴールでも決めてしまえば、誰にも手が終えなかった今季開幕直後のジェズスが帰ってくるだろう。それがいつになるのか次第で、カタールワールドカップ前までの残り4試合の結果が変わってきそうだ。

(文:安洋一郎)

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