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スコア以上の「差」があった。なぜアーセナルはチェルシーを圧倒できたのか?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

守護神の前に立ちはだかるもう一人の「壁」


【写真:Getty Images】

 これまでアーセナルのプレスについて述べてきたが、チェルシーもこれに対して無策だったわけではない。しかし、マルティン・ウーデゴールらにジョルジーニョを消されてしまったのは痛恨だった。

 ウーデゴールは攻撃時に閃きのあるプレーでチャンスを生み出すのはもちろん、守備時でも高い走力を生かしたプレスバックでチームに貢献する選手だ。このウーデゴールの存在によってジョルジーニョは試合を通じて消されてしまった上に、ダブルボランチでコンビを組んだロフタス=チークも微妙と、チェルシーは中盤を介した攻撃ができなかった。

 中盤を消されたチェルシーはサイドや裏へのロングボールを使ったが、ここで壁として立ちはだかったのが、ウィリアン・サリバとガブリエウ・マガリャンイスのCBコンビだ。特に際立っていたのがサリバで、FW相手でも走り勝てる走力を生かした抜群のカバーリングは相手チームからすると脅威で、右サイド左サイド関係なしに背後へのボールを、個人の能力の高さで回収していた。

 この試合でもクリーンシートを記録したアーセナルは、第15節終了時点でニューカッスルと並び、リーグ最少の11失点しか喫していない。ガブリエウ・ジェズスが1ヶ月以上ゴールから遠ざかっていることもあり、直近のアーセナルで“圧勝”と呼べる試合は前節ノッティンガム・フォレスト戦ぐらいしか見当たらないが、それでも勝ち点を伸ばしてプレミアリーグ首位をキープしているのは守備陣の活躍あってこそだ。

 特に現在のサリバは守備時におけるスピードと強さが素晴らしく、多少判断を誤っても持ち前のスピードで“ミス”を“ミスじゃなく”してしまう。守護神アーロン・ラムズデールの前に、もう一つの壁であるウィリアン・サリバが君臨するアーセナル守備陣から得点を奪うことは容易ではないだろう。

(文:安洋一郎)

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