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ドイツ代表が克服できなかった課題とは? 敗退につながった対応の甘さ【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

ドイツ代表が必ず失点を喫する理由



 バイエルン・ミュンヘンの監督時代からフリック監督は超攻撃的なサッカーを展開している。2019/20シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝バルセロナ戦での衝撃の8-2の試合を覚えている方も多いのではないだろうか。

 しかし、これだけ大勝した試合でもフリックのチームは失点をしている。それはドイツ代表でも同様だ。2022年にドイツ代表はワールドカップを含めて12試合を戦っているが、そのうち無失点に抑えることができたのはイスラエル代表戦とオマーン代表戦の2試合しかない。他の10試合で失点を喫している。

 これにはフリック監督が攻め勝つというサッカーを志向していることに要因がある。先述した通り「攻撃的な守備」で相手陣内に攻め入って、大量得点で試合に勝利することを目指している。1失点、2失点しようが攻め勝つ超攻撃的サッカーなのだ。

 ドイツ代表でもバイエルン・ミュンヘン時代同様に攻撃の形を作ることはできている。しかし、バイエルン・ミュンヘン時代にいたポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキ級のストライカーがいないこともあり、得点力不足に陥っている。

 今大会でも決定力不足は顕著であり、3試合全てで実際の得点数が「あるシュートチャンスが得点に結びつく指標」である「ゴール期待値」を下回った。その中でも日本代表戦とコスタリカ代表戦では実際の得点数とゴール期待値が2点以上の乖離がある。

 点が決まらなければ、このサッカーで勝ちきることは難しい。その代表例がワールドカップ初戦の日本代表戦だろう。前半にPKで先制するも追加点のチャンスを逃し続け、後半に逆転をされてしまった。

 コスタリカ代表戦でも高い位置を取るサイドバックの背後へのロングボールやサイドチェンジで突破を許しており、かなり厳しい戦いを余儀なくされた。被カウンター時の守備対応も甘く、58分と70分に失点して、一時は逆転を許した。

 これは今大会に始まったことではない。2022年に入ってからずっと同じような形でドイツ代表は勝ちきることができず、引き分け、もしくは敗れることが多発していた。この課題を克服できなかったことがドイツ代表の早期敗退に繋がっている。

 続投するかどうかは不透明だが、フリック監督は2年後のユーロ(欧州選手権)、4年後のワールドカップに向けて「今の戦力では攻め勝つことができない」問題に対して真摯に向き合わなければいけない。

(文:安洋一郎)

【了】

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