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「予測不能な攻撃」こそがアーセナルの強さ。相手を混乱させるメカニズムとは【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

残り10試合


 先制点の場面、ホワイトがザハの手前でインターセプトすることに成功する。その際にザハはプレスバックに戻らず、イングランド代表DFをフリーにさせてしまった。

 その結果、左SBのタイリック・ミッチェルがホワイトと右WGのサカを同時に見る必要が生まれ、両者へのマークが甘くなってしまった。そしてホワイトからサカへのパスが簡単に通り、マルティネッリのゴールが生まれている。

 2得点目の場面では逆サイドからのクロスが流れてきたこともあり、サカとホワイトに対してミッチェルとザハの両名が寄せることができなかった。この展開となれば、彼らの技術力と連係をもってすればプレーは簡単だ。再びホワイトからサカへと縦パスが通ってゴールが決まっている。

 ゴールが決まった場面以外でもホワイト→サカという崩しは前半に多発していた。それは先述した通り、複数名で攻めるアーセナルに対して、WGの守備タスクが曖昧なクリスタル・パレスのミスマッチが原因しており、サイドにおける攻守両面で両チームの差は明らかだった。

 プレミアリーグも残り10試合。ここまでは首位を走るアーセナルだが、ここにきて負傷者が続出しているのは痛恨だ。特に最終ラインであればどこのポジションでも起用可能な冨安健洋の離脱の影響は大きく、現状で本職が右SBの選手はホワイトしかいない。

 クリスタル・パレス戦の83分以降のようにトーマス・パーティを右SBで起用することもできなくはないが、それは同時に中盤の強度が落ちるというリスクを背負うことになる。となると、アルテタ監督が語った「予測不能」な攻撃力を常に維持することは難しくなるだろう。今節輝いたホワイトの負担をいかに減らすかが、今季のリーグ優勝の行方を占うかもしれない。

(文:安洋一郎)

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