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コラム 10か月前

佐野海舟はなぜボール奪取能力が高いのか? 他とは違う“構え”の姿勢がもたらすスムーズな重心移動の仕組み【動作分析コラム】

シリーズ:動作分析コラム text by 三浦哲哉 photo by Getty Images

“後ろ足”をスムーズに動かす技術

 自重を跳ね返すような足首のバネの強さは、スプリントや方向転換の速さとも相関があると言われています。ブンデスリーガの公式スタッツでも、スプリント回数や最高速度で上位にランキングされている走力の高さは、ピッチを縦横無尽に駆け回る佐野のプレースタイルの基盤になっているでしょう。

 さらには、ボール奪取後にドリブルで長い距離を速く運べる推進力の高さも、佐野の魅力的なプレーの一つです。

 鹿島アントラーズ所属時の2024年J1リーグ第14節、サンフレッチェ広島戦での3点目。センターサークル付近で相手選手のパスをインターセプトした佐野は、そのまま左サイドのペナルティーエリアにドリブルで侵入し、チャブリッチのゴールをアシストしています。

【動画 鹿島アントラーズvsサンフレッチェ広島】

参照元:YouTube

 ボールタッチする脚の動きに着目すると、身体の前側でタッチするだけではなく、ボールの移動に身体の動きを合わせるような形で真下にあるボールを後ろ足ですくって前に持っていく動きも織り混ぜることで、リズミカルに推進していきます。

 上半身の姿勢を保持しながら、スプリントに必要な脚のサイクルを大きく崩すことなく後ろ足の股関節や膝下をスムーズに動かす技術を持っていると、ドリブルのスピードは落ちにくくなります。

 同様に、球際でのルーズボールを後ろ足でかき出すようにして前に持ってくる動きや、インターセプトで前足を伸ばしたあとに後ろ足を素早く前に戻して体勢を崩すことなくステップを踏む動きの質の高さは、佐野の特徴であるボール奪取後の次のプレーへの移行のスムーズさにも繋がっています。

 日本代表への復帰やビッグクラブへの移籍を多くのファンに待望されていることが、佐野のパフォーマンスの高さを何より物語っているでしょう。現在24歳ですが、まだまだ伸びしろがありそうなしなやかな動きをしていることもあり、今後のキャリアがとても楽しみな選手の一人です。

(文:三浦哲哉)

書籍情報

『サッカーフィジカルのプレーモデル』

三浦哲哉 著、須佐徹太郎 監修
定価:2,310円(本体2,100円+税)
これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型
世界で活躍するトップ・オブ・トップのサッカー選手の動作的特徴として、「スプリント」「減速・加速」「方向転換」の速さが挙げられる。それらを支えているのが、「弾むバネ」「沈むバネ」「しなるバネ」の3つのバネである。また、身体的特徴として、「上半身の姿勢の良さ」「腹~腰回り、下腹部の筋群の発達」「自由度の高い股関節」がある。本書では、現代サッカーを制するために必要不可欠な3つのバネの作り方を中心に、中学生年代から大学生年代かつプロ選手まで適用できる、これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型を提示する。

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