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コラム 8か月前

久保建英が“ボールを持つこと”を言語化する。なぜ何か起こるのか。レアル・ソシエダの王たる理由【東大分析官の視点】

シリーズ:東大分析官の視点 text by 阪田天祐 photo by Getty Images

なぜ久保建英はボールを持てなくなったのか?

 前半、ピッチ上で一番の輝きを放っていた久保が、なぜ後半になって“消えた”のか。その多くの理由は、ソシエダのイマノル・アルグアシル監督が後半に導入した5-4-1システムと結びつけることができる。

 もちろん、極度に引いた5-4ブロックを形成して守備の時間が長くなったことも、久保のプレー関与時間が減った一因だが、ここでは、ソシエダがビルドアップを放棄した点に着目したい。

 ビルドアップに関して、前半までの4-3-3システムと最も大きく異なる点は、中盤の底、いわゆるアンカーの不在である。この変化は、ビルドアップ時に使いたいスペースが、相手FWと中盤の間のスペースから、相手FWの両脇のスペースへと変更されたことを意味する。

 つまり、後半になってソシエダがボールを繋いで前進するためには、両ストッパー(中央以外のセンターバック)が相手FWを越えた位置で受け、相手の中盤のライン(ボランチやサイドハーフ)と駆け引きしながら、さらに前方へとボールを供給する必要がある。

 しかし、対するビジャレアルの両サイドハーフは内寄りに構え、ソシエダのストッパーに対して素早くファーストプレスを決める。中央の選択肢は相手ボランチに消され、サイドは相手サイドバックに消されてしまった。

 こうなってしまうと、ソシエダのビルドアップは成立しなくなり、前線で走り回るFWミケル・オヤルサバルをめがけてロングボールを蹴ることしかできなくなってしまった。

 こうして繋ぐビルドアップを放棄したことにより、自陣でボールを奪い返しても、前線に可能性のないロングボールを蹴るしかない→相手に簡単に回収される→整備されたプレス回避の餌食となる→ひたすら押し込まれる→ピンチ→蹴る→回収される→プレス回避される→押し込まれる→ピンチ→…と、ビジャレアルに半永久的にボールを支配されることになった。

 また、システム変更によってサイドバックがウイングバックとなり、サイドのレーンが渋滞してしまったことも大きい。ソシエダの右サイドハーフは、自由に右手前に落ちることができなくなった。そしてインサイドハーフがポジションを後方に落としてボランチとなったため、自由に中盤の選手と入れ替わって内側のポジションを取ることもできなくなった。

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