完璧主義者がゆえの、勝負師としての甘さ
サッカー界に限らず、すべてが100点の完璧な人間は存在しない。近年のプレミアリーグを盛り上げたジョゼップ・グアルディオラとユルゲン・クロップの両指揮官にも苦手なことはある。
これを前提として、アルテタは「完璧主義者」である側面と「不器用」な側面の両方を持ち合わせている。そのため、事前に準備ができるプランAには強いが、アドリブ的な要素や柔軟性が求められるプランBには弱い。
このプランBの弱さが一発勝負の舞台では致命的となっているのかもしれない。最後にトーナメントの決勝に進出したのは優勝した2019/20シーズンのFAカップまで遡り、直近の準決勝は4度続けて敗退。ここぞという場面での勝負弱さが露呈している。
また完璧主義者がゆえに、勝負師としての決断力にはやや甘さがあると筆者は推測している。これがチームのピークを最も大事な試合に持ってくることができない理由でもある。
彼の決断力の無さが露呈したのは、PSGとの準決勝の1stレグと2ndレグの間に行われたボーンマス戦でのメンバー選考だろう。
準々決勝のレアル・マドリードとの1stレグと2ndレグの間に行われたブレントフォード戦では大胆なターンオーバーを行ったが、ボーンマス戦は3位以下との勝ち点差が迫っていることもあって、フルメンバーでの戦いを挑んだ。
しかし、結果は1-2の逆転負け。勝ち点を落としただけでなく、重要な試合に向けて主力を温存することにも失敗し、PSGとの2ndレグは後半にガス欠のような状態になってしまった。
この“二兎を追う者は一兎をも得ず”の状況になったのは、すべての試合に勝ちたい完璧主義者ゆえの勇気の無さが招いたことである。何かを勝ち取るためには、どこかでリスクを取らなければいけない。思い切った采配が少ないのは、今のアルテタに足りていないところかもしれない。
そして、彼のその完璧主義な性格は、選手起用にも大きな影響を与えている。