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コラム 7か月前

父の死、鬱、がん…。「恐れる」のをやめたアチェルビの軌跡。「サッカーができない」インテルのおじさんを救ったもの【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

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 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝2ndレグで、バルセロナを破り決勝進出を決めたインテル。誰もが敗退を覚悟した試合終了間際、起死回生の同点弾を決めたのは、この日3バックの中央を担っていたフランチェスコ・アチェルビだった。自らの得点で欧州制覇の夢を手繰り寄せた遅咲きの波乱万丈のキャリアとは。(文:佐藤徳和)

フランチェスコ・アチェルビはなぜそこに?

アチェルビ
【写真:Getty Images】

 勝利への執念に突き動かされた一撃だった。

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 5月6日、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝2ndレグ。バルセロナを本拠地に迎えたインテルは、2-3と1点のビハインドを背負い、後半アディショナルタイムに突入していた。

 アウェイでの1stレグは3-3のドロー。インテルの決勝進出は、絶望的に追い込まれていた。席を立ち、スタジアムをあとにするサポーターもいる。しかし、ネラッズーリは諦めてはいなかった。

 デンゼル・ダンフリースが右サイドからグラウンダーの速いクロスを蹴り込むと、エリア内で長身の選手が、ロナルド・アラウホを体全体でブロックしながら、ゴール右隅にシュートを流し込んだ。ジュゼッペ・メアッツァが咆哮する、起死回生の同点弾。チームを救ったのはフランチェスコ・アチェルビだった。

 3バックの中央を担う男が、一体どうしてセンターフォワードの位置にいたのか? シモーネ・インザーギ監督はこう振り返る。

「フランチェスコのひらめきだった。『守備に戻れ!』とは誰も言わなかった。もし得点していなかったとしても、私の評価は極めて高かっただろう。我々は感動的な偉業を成し遂げた」

 アチェルビ自らの判断で、チームの中で誰よりも相手ゴールに近い位置に立っていた。だが、最前線に張りついていたわけではない。チーム最年長の37歳は、疲労困憊で、肩で息をし、何度も膝に手を当てていた。

 それでも同点弾直前の相手カウンターに対し、敵陣から味方陣内へと全力を振り絞って戻った。そこから再び攻撃へと転じ、ストライカーのような鮮やかなワンタッチゴールを流し込んだのだ。それも、利き足とは逆の右足でのシュートである。

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