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コラム 7か月前

父の死、鬱、がん…。「恐れる」のをやめたアチェルビの軌跡。「サッカーができない」インテルのおじさんを救ったもの【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

「がんが俺を救ってくれた…」

「恐れるのをやめたのは、あの衝撃的な診断のときだった。このところまた考えているんだ。『アーチェ(アチェルビの愛称)、お前はもしあの病状が再発したらどうするんだ?』って。その答えはこうだ。『また立ち向かうよ』」「3カ月間の化学療法。まるで別世界に足を踏み入れたようだった。しかも思っていたよりもずっと身近な世界だった。一度その世界に入ると、もう逃れることはできない。痛みと勇気が同居する異質な世界だ」

 さらに、「ひどい矛盾に聞こえるかもしれないが、がんが俺を救ってくれた。あのときはミランにいたけれど、やる気を失っていて、もうサッカーができなかった。酒浸りしていて、なんでもかんでも飲んでいた。そんなときに、また戦う相手が現れた。乗り越えるべき限界ができたんだ。そして、俺は子どもの頃のように戻れたんだ」と、がんとの闘病生活が、新たなモチベーションになったと主張する。

 実は、ミラン時代には、かけがえのない父を亡くしていた。そうした理由で、酒に走り、鬱にもなった。そんな矢先のがんとの戦いだった。

 幸い、それからはがんの再発はなく、2018年にはラツィオに移籍する。強豪クラブの必要不可欠な選手となると共に、イタリア代表でも常に招集メンバーに名を連ねた。アッズーリが欧州の頂点に立ったユーロ2020(欧州選手権)でも3試合に出場し、優勝に貢献した。

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