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「サッカー『BoS理論』ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法」の続編を連載中。ドイツサッカーの根本的な考え方=「BoS理論」を現実のシチュエーションにどう落とし込んでいくか。ブンデスリーガ1部残留を決めたハイデンハイムを例に考えていく。(文:河岸貴)
『サッカー「BoS理論」 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』
カンゼン・刊
河岸貴・著
ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論「BoS(ベーオーエス)理論」(Das Ballorientierte Spiel:ボールにオリエンテーションするプレー)が足りていない日本サッカーの現状に警鐘を鳴らす。ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した著者が、日本のサッカーの現状を直視しながら、「BoS理論」におけるボール非保持時の部分、「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」の道筋をつけた一冊。
リスクを負うべきシチュエーション
ボール奪取後のプレー態度としてまず大事なことは、前方を見るということはすでに述べました。これはボール奪取後にかかわらず、ボール保持時全般でも常に言えることです。
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ボール奪取後にできるだけ速くゴールに向かうためには、当然のことながらテンポが必要であり、一方で相手はこちらがゴールに向かえば向かうほど、必死にゴールを守ろうとします。しかし、だからといって中央を固めようとする相手に、早々にボールロストのリスクを回避しサイドに展開し、一拍おいて様子を見るのではなく、相手が人数をかけて完璧に中央を締める前に、できるだけゴールに直線的にリスク覚悟で前方に素早くボールを運びます。
こここそがリスクを負うべきシチュエーションです。ここで例に挙げるシーンは、現地で観戦していた2024/25シーズンのドイツ・ブンデスリーガ1部の第31節、シュトゥットガルト対ハイデンハイムです。

【図3-1】横パスのカット
55分、ハイデンハイムは自陣深くで、U-21ドイツ代表の長身ストライカー、ニック・ウォルトメイドの長い横パスを、2023/24シーズンだけシュトゥットガルトに所属したU-21ドイツ代表のハイデンハイムの左ウイングバック(WB)フランス・クレツィヒが何とか足を伸ばしカットします(図3-1)。

【図3-2】ゲーゲンプレスからの解放する横パス
つんのめった体勢を立て直して、ルックアップしたときにはすでにパスカットされたウォルトメイドを含めてシュトゥットガルトの4人に囲まれていました。そこですかさずハイデンハイムのMFマルヴィン・ピアリンガーがゲーゲンプレスを受けている味方をサポート(図3-2)。

【図3-3】テンポの良いドリブルからスルーパス
クレツィヒから横パスを受けたピアリンガーはオープンスペースへ一気にドリブルで駆け上がり、センターラインまでボールを運び、ワントップのアドリアン・ベックにスルーパスを通します(図3-3)。
そのパスに対してベックはペナルティエリアの直前で触り、ペナルティエリア内で何とか戻ってきたシュトゥットガルトDFを切り返しでかわせず、コーナーキックになりました。ちなみにクレツィヒがボールを自陣ペナルティエリア付近で奪ってから、ベックがペナルティエリア手前でスルーパスに到達するまで約9秒でした。
ここで注目すべき点は、まずクレツィヒが無理矢理縦を選択しなかったことです。ボール奪取直後は前方へのプレーが最優先ですが、自陣深くで四方を囲まれた状況で独力で突破するのはリスクが高すぎ、逆カウンターを受ける可能性が十分にあります。