間もなく開幕する移籍市場。“魔術師”は最初の難関にどう立ち向かう?

【写真:Getty Images】
パーソナリティーは申し分ないが、問題は今のミランの状況だ。“赤い悪魔”は今季、8位で終わり、欧州チャンピオンズリーグ(CL)だけでなく、すべての欧州コンペティションの出場権を逃がした。さらに、昨年夏に発足した「未来」の名を持つセカンドチーム、ミラン・フトゥーロも不振から脱することができず、セミプロのセリエDへと降格した。
サポーターの怒りは頂点に達し、5月24日の最終節モンツァ戦を数時間後に控えた中、クラブ本部「カーザ・ミラン」前の広場には、5000人ものウルトラスが集結。怒りの矛先は、パオロ・スカローニ会長、フルラーニCEO、テクニカル・ディレクター(TD)のジェフリー・モンカダだけでなく、シニア・アドバイザーを務めるズラタン・イブラヒモヴィッチにまで向けられた。
「全員出ていけ。この苦しみからミランを解放しろ」と書かれた横断幕が掲げられ、その後、試合が開催されたサン・シーロまでデモ行進が行われている。
サポーターが求めていたのは、レジェンドのパオロ・マルディーニのSD就任だ。19回目のスクデットを獲得した21/22シーズンにTDを務めていたが、オーナーとの確執により、退任となった。そんな偉大なOBの復帰が要望されていた中でのターレの就任である。パローロは、こうアドバイスを送る。
「視点を変える必要がある。ビッグクラブでは、適切な選手像を見極めるためにスカウトたちとの連係が不可欠だからね。ターレは“ひらめき”や“自分の目”を信じるタイプだけれど、いまはメタデータも活用できる」と主張する。
さらに、「選手たちとの関係を築き、敬意を得ることが求められる。ラツィオではいくつかのタイトルを獲得したけれど、その中にはスクデットはなかった。とはいえ、彼にはミランのロッカールームでもリーダー格の選手たちに受け入れられる資質は十分にある。ラツィオのときと同じようにね」と続けた。
最初のミッションであった監督選考では、ターレ自身も切望していたマッシミリアーノ・アッレグリを迎え入れることとなった。セリエAで5度の優勝を誇る名将の招聘に成功している。そして間もなく、SDとしての能力が問われる移籍市場が開幕する。
今のチームで最も違いを生み出せるプレーヤー、タイアニ・ラインデルスが退団すると確実視されているが、仮に放出となれば、サポーターの怒りは沸点に達するだろう。移籍オペレーションでどのような策が講じられるのか。就任直後から数々の難題が突きつけられている。
果たして、「収益の魔術師」は、不振にあえぐクラブを短期間で蘇らせる魔法の杖も持ち合わせているのだろうか。
(文:佐藤徳和)
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