ポジション争いが生まれたアーセナル
例えば29分にマルティネッリが判断ミスでコートの外にボールを出してしまった場面は、直前にウーデゴールが自陣ボックス手前でボールを奪ってから攻撃が始まっている。彼らがいなければ速攻の起点が生まれていないのも事実なのだ。
そのため、速攻の質と試行回数を上げるためには、彼らに代わる選手をピッチに送り出すのではなく、ピッチ内での判断を上げるしかない。開幕戦ではボールの失い方があまりに悪かったため、ここを次節までにどのように修正するのか注目だ。
この試合で評価したいのが、開幕戦から2人の新加入選手を先発起用したことである。
スビメンディはトーマス・パーティーが退団したことで必然だったかもしれないが、ギェケレシュの場合はハフェルツも選択肢にあることも踏まえると“抜擢”と捉えても良いだろう。
昨季までのアーセナルはプレミアリーグの20チームで最もスタメン予想がしやすいチームだった。怪我人の影響もあったが、アルテタ監督の中での序列がハッキリとしており、ポジション争いが少なかったためである。
ただ、今夏に6人の主力級の選手を補強したことで、昨季までと比べるとスタメン予想が難しくなっている。これは極めて健全なことだ。
スタメン予想が難しいことは、多くのポジションでレギュラー争いが繰り広げられていることの裏付けであり、チーム内での競争力が高まる。その上で誰か特定の個人に依存するのではなく、プレータイム管理ができれば理想だ。
開幕戦のアーセナルはヤクブ・キヴィオルとクリスティアン・ノアゴール(軽傷)がベンチから外れているほどの選手層だった。レアンドロ・トロサールらには移籍の噂もあるが、アルテタの中で起用できる選手の選択肢が増えていることはポジティブだろう。
昨季のアーセナルは11月にスポーツ・ディレクター(SD)のエドゥが退団するなど、チームの土台部分であるフロントに未知数な点が多かった。それでも今年3月にアンドレア・ベルタを新SDに招聘し、早い段階で2025/26シーズンに向けたチームビルディングを行っている。
補強した選手もプレシーズンから合流するなど万全な状況でシーズンが開幕。いよいよプレミアリーグ優勝以外は“失敗“という言い訳ができない1年が始まった。
(文:安洋一郎)
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