整理されたロングボールを効果的に活用したビルドアップ
今節に関しては、アーセナル側にも問題がある。最前線にヴィクトル・ギェケレシュ、アンカーにマルティン・スビメンディが起用されており、前線から制限をかける上で重要なポジションに2人の新加入選手がいた。
ただ、それを差し引いてもマンチェスター・ユナイテッド側のビルドアップの構造が機能していたことがこの結果に繋がったと言って良いだろう。
マタイス・デ・リフトをセンターとした3バックが幅を取ることでプレスがかかりにくい構造を作り、右にはレニー・ヨロ、左にはルーク・ショーとドリブルでのキャリーもできる選手を配置した。
アーセナルのプレスが機能しにくい形を作ったことで、3月の試合で多発した苦し紛れのロングボールが減少。長いボールを使うとしても“意図”した形で前進できていた。
この“意図”したものとは低弾道のロングボールである。前線に並んだクーニャやマウント、エンベウモは上背こそないが、足下の技術はピカイチ。仮に相手DFを背負っていた状況でも足下でコントロールできる技術があり、頭で競るボールではなく、低い弾道で彼らが処理しやすいボールを多く蹴っていた。
アーセナルが同サイドに圧縮してプレスをかけた場合は逆サイドへのサイドチェンジ、相手のカウンターを止めて自陣でマイボールにすれば、背後のスペースに長いボールを供給する。出し手と受け手の共通理解が整理されたことで、特に前半はロングボールを使った前進の精度が高かった。
プレス回避が効果的だったことと、クーニャとエンベウモの単騎での完結力の高さが試合を優位に運ぶ重要な要素だった。しかし、フットボールは勝負の世界。試合には勝てなかった。
この試合でマンチェスター・ユナイテッドが敗れた理由は明らか。昨季から変わらないGKの問題だ。