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コラム 3か月前

久保建英が導くレアル・ソシエダの新攻撃。日本が誇る先手マシーンがもたらす局面の優位性【東大分析官の視点】

シリーズ:東大分析官の視点 text by 阪田天祐 photo by Getty Images

久保建英が輝きを取り戻す。何を修正したのか?

 そしてチームとしても、相手を押し込んでも崩し切ることはできず、中央でロストして危険なカウンターを許す場面が目立った。ソシエダは一度押し込んだ後、逆SHまで中に入ってボールを受けようとするなど、選手が中央に密集するため、相手を中に固めてしまう。

 こうしてスペースの無い中央で攻め切ろうとした結果、前半のソシエダの崩しは、無理やりのドリブル突破やアーリークロスといった、スピードを上げた技術的負荷の高いフィニッシュ手段しかなくなってしまっていたのだ。

 これでは崩し切れずに終わる可能性が高いし、そもそも素早く帰陣するエスパニョールの守備ブロックを前では不用意なロストが増えるばかり。後半に向けて、明らかに修正が必要な状態だった。

 “ソシエダの王様”の存在感が消えさり、アウェイチームが主導権を握る前半が終わった。改善すべきなのは、より大外の選択肢を使って、相手の守備ブロックを広げることであるのは明確だった。

 フランシスコ監督、そして久保は修正した。後半開始早々の46分、右のハーフウェーライン手前でボールを引き取った久保は、スライドする相手の間を縫ってブロックの内側に侵入。

 入れ替わるように大外に流れたスチッチにボールを渡すと、背番号14はそのまま目の前のポケットのスペースに向かって走り込み、再びパスを受け、少ないタッチでキーパーとDFラインの間にクロスを供給した。

 久保は自らのポジショニングとオンザボールのスキルを活用し、外→内→外と相手の目線を動かすことで先手を取り続け、華麗に守備ブロックを崩してみせたのだ。

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