死角から飛び出した小松蓮の嗅覚「本当に感覚的なもの」
「相手センターバックの背中に入って駆け引きを終わらせて、ニアでヘディングする、というイメージができていました。あとはボール次第かなと思っていたなかで、本当にクロスがよかったので」
死角に潜り込んで気配を消した小松は、井出がワンタッチでクロスを供給した直後に小笠原の前方に回り込む。そして宙を舞いながら、こん身の力を込めてボールに頭をヒットさせた。
相模原のゴールマウスに仁王立ちするバウマンはこのとき、ややニア寄りにポジションを取っていた。それでも小松は、194cm・84kgの巨躯を誇る守護神の逆を突こうとは考えていなかった。
「とにかく強いシュートを相手ゴールに、と思っていたので。本当に感覚的なものですけど、シュートをファーへ流すという選択肢は、あの瞬間の自分のなかにはありませんでした」
止められるものなら止めてみせろ。強い思いが込められた強烈な弾道がニアの狭いコースを撃ち抜く。川崎フロンターレをPK戦の末に撃破した天皇杯3回戦のヒーローになったバウマンもなす術がなかった。