PKキッカーをめぐる舞台裏「意味が分からなかった」
「俺は真大に『お前がファウルをもらってPKになったんだから、お前が蹴れよ』と、一番最初に胸を叩きに行きました。でもリカルドがめっちゃ20番のボードを出していた。『安藤選手のマークに着けってことなのかな』と思ったけど、ずっとボードを引っ込めないから意味が分からなかった。最終的に俺って言われたから、蹴るしかなかったですね」
瀬川は男気を見せたが、指揮官から指示された以上、決めるしかない。目の前には福岡サポーターが陣取り、相手も意図的に選手交代をして時間をかけるなど妨害行為をしてきたが、数々の修羅場をくぐってきた男は冷静に右隅にゴールを決めた。
この一発が決勝点となり、柏は2−1で福岡に勝利。3ポイントを追加して、勝ち点53の2位に浮上。ラスト10試合に2011年以来のタイトルを賭けることになった。
6月に戻ってきた瀬川は早くも復帰後3点目。「自分でも勢いをもたらせているのかな」と自信をのぞかせた。特に際立っているのが、狭いスペースで敵のプレッシャーを受けても確実にボールをコントロールできる技術の高さだ。それがなければ、細谷のPK奪取につながるヒールもなかった。
その秘密は2023年から今年6月まで過ごした川崎フロンターレでの日々にあるという。