「誰がどう見てもこの試合は落としてはいけなかった」
「すべての試合にかける思いは同じですけど、誰がどう見てもこの試合は落としてはいけなかった。それなのに負けてしまった事実が本当に重たかったし、自分のなかで気持ちの整理がつけられませんでした」
勝者と敗者を残酷なまでに分け隔てる決勝点は、両チームともに無得点で迎えた86分に生まれた。
敵陣の中央から右タッチライン際へボールを持ち運んだ横浜FCのMF山根永遠が、新潟のMF白井永地の必死の対応にあって迷った末に、サポートにきたFWアダイウトンに短い横パスを出した。
かつてジュビロ磐田やFC東京、J2のヴァンフォーレ甲府で活躍。母国ブラジルのクルーベ・ド・レモを経て、7月末に加入したばかりの横浜FCですでに2ゴールをあげているストライカーは、ボールをほんのちょっとだけ左へ動かしてから、利き足とは逆の左足を振り抜くモーションに入った。
場所はペナルティーエリア右角の後方。ゴールまで20メートル以上も離れていただけに、新潟の選手たちの寄せもやや甘かった。田代自身もアダイウトンの次のプレーを絞りきれなかったと悔やんだ。