「とにかく相手よりも先にボールに触ろうと」
落下点に飛び込む味方のFW長沢駿とMFレオ・ゴメスを、町田のDFドレシェヴィッチとMF望月ヘンリー海輝が迎え撃つ。さらに町田の守護神・谷晃生もパンチングしようと飛び出してきた状況で、須貝英大に代わって85分から投入されていた佐藤はPA左側のスペースへ侵入していった。
「1点ビハインドの状況だったので、PA内へ侵入して仕事をしなきゃいけないと思っていました。ターゲットになる味方の選手がゴール前にいるので、絶対にファーへこぼれてくるチャンスがあると思って準備もしていました。そこは僕個人というより、チームとしての狙いでもありました」
佐藤が振り返った通りに、クロスはゴール中央の混戦をすり抜けて左サイドに流れてきた。準備していた分だけ佐藤の反応が早い。近くにいた沼田はボールウォッチャー気味の体勢で慌てて対応した。
「実際にボールが流れてきたなかで、とにかく相手よりも先にボールに触ろうと」
ワンバウンドしたこぼれ球は佐藤の胸のあたりに弾んでいる。先に触るには上半身を屈めながら、思い切り首を伸ばして飛び込むしかない。対照的に右足でのクリアを試みた沼田は、死角の位置から姿を現した佐藤に初めて気がついた。次の瞬間、右足はボールではなく佐藤の前頭部をヒットしてしまった。
選手の具体名にこそ言及しなかったものの、町田の黒田剛監督がPKを与えた場面を悔やんだ。
「振った足に対して相手の頭が出てくるケースもある。頭で押し出してクリアするとか、あるいは競り合うプレーをしなければいけなかった状況で、その点では首位を争っている京都さんに上回られました」