フットボールチャンネル

J1 2か月前

京都サンガの戦略は相手をカオスに落とし込む。優位性と破壊力をもたらす仕掛け。原大智をどう活かすか?【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

相手をカオスに落とし込むが、自らはフラクタルの中でプレーする

「ストーミング」の急先鋒と思われたリヴァプールは、時間の経過ともに、「ポジショナルプレー」の代表格のマンチェスター・シティのサッカーと収斂していきました。「ストーミング派閥」ことレッドブルグループも、マルコ・ローゼに率いられた一時期のザルツブルグ以外は、段々と普通のサッカーに変化してきます。

 特に興味深い変化は、「ストーミング」の使い手と思われたレッドブルグループに登用された指導者の面々が、レッドブルグループから外に出ると、「ポジショナルプレー」のようなサッカーをすることが多かったことです。

「ストーミング」は「カオス」とセットで使われることが多い言葉でした。「ポジショナルプレー」がボール保持によって、各々の立ち位置を整えることを目指しているとします。

 一方で「ストーミング」はボールを手放すことによって、雪崩のように相手陣地に何度も迫っていくサッカーとすると、各々の立ち位置がどうこう言っている場合ではありません。「ストーミング」にとっては、相手の立ち位置も含めて再現性のない形に持っていくことが理想です。

 一方で、カオスなピッチのなかで正しい判断を繰り返していくサッカーは、「ストーミング」とは関係なく、実は現代サッカーでも必要とされる要素になってきています。ボール保持によって、各々の立ち位置を整えることの意味がゆっくりと静的な立ち位置から動的な立ち位置へと変化してきているからです。配置かみ合わせ論では説明が足りなくなってきている状況が現代サッカーの現在地と言えるのではないでしょうか。

 さて、前提を共有したところで、具体的に京都のサッカーについて考えていきたいと思います。京都のサッカーも相手陣地に何度も突撃を繰り返すサッカーですが、カオスなようで必要以上にカオスにならないようなキャスティングと仕掛けが見られます。

 相手をカオスに落とし込むけれど、自分たちはフラクタルのなかでプレーすることで、京都は試合の優位性を自分たちに持っていこうとする戦略でシーズンに臨んでいるのではないでしょうか。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!