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J1 2か月前

「エリアに役割を規定する」京都サンガはカオスのようでカオスでない。早さと速さをもたらす基準【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

 いずれも下位でシーズンを終えてきた過去3シーズンとは対照的に、今季は6試合を残して首位・鹿島アントラーズに勝ち点5差に迫っている京都サンガF.C.。その理由をひも解いていくと、一見カオスのようでそうではない、京都の選手たちが遂行するルールや基準が見えてくる。(文:らいかーると)

【前編から読む】京都サンガの戦略は相手をカオスに落とし込む。優位性と破壊力をもたらす仕掛け。原大智をどう活かすか?【戦術分析コラム】

カオスのようでカオスでないサッカーの実現

京都サンガ
【写真:Getty Images】

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 京都サンガF.C.が他と一味違うところは、ポジションごとの役割で規定されているというよりは、エリアごとに役割が割り振られているところでしょうか。

 例えば、ポケットへ飛び出すことをチームの約束事としているとします。多くのチームはインサイドハーフの選手がポケットへ飛び出すことが多いでしょう。京都の場合は文字通りに誰が飛び出してもOKとなります。サイドバックがでていくこともあれば、内側に絞ったウイングがポケットへ出ていくこともあります。

原大智へのロングボールが基本路線だとしても、相手の背後へのボールも多い。裏へ飛び出す選手、ポジションに縛りはありません。飛び出せる選手のうち誰が飛び出してもOKとなります。ときにはセンターバックの宮本優太が出ていくこともあります。

 このルールによって、京都はカオスのようでカオスでないサッカーの実現に成功しています。誰かが不在ならば、京都らしいサッカーが実現できないなんて状況には陥らない仕掛けになっているからです。

 チームに優位性を持ってくるならば、誰がどのエリアでどの役割をしても大丈夫というルールはトランジションで最も効果を発揮しています。相手陣地へボールとともに突撃することの多い京都は、トランジションで整理された守備からボール回復を苦手としています。

 一方で、ボールに近い選手がプレッシングをかけること、自陣のゴールに近い選手がまずはポジションを埋めることのルールによって、守備への切り替えが尋常でないスピードで行われています。ウイングの選手がサイドバックの位置に戻ることだってあります。

 つまり、ボール非保持の局面でも整理された状況に持っていくまでは、誰がどの位置でもいいので、優先順位の高い場所から埋めていくルールが忠実に実行されています。よって、京都の帰陣は他のチームよりも速いスピードで行われています。

 エリアごとに役割が割り振られているというよりは、味方、ボールの位置を基準に迷わずにスプリントをしてサポートに行くことが習慣化されていることがより正しい京都の表現になるかもしれません。だからこそ、彼らには迷いがないので判断が早く、そして、シンプルにスピードも速いことからトランジションで無類の強さを発揮しています。

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