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J1 2か月前

発想が変わると早稲田大学ア式蹴球部が変わった。闇雲に目指した「Jリーガー」にはどんな価値があるのか?【コラム】

シリーズ:コラム text by 岡田優希 photo by Getty Images

これこそまさに自己満足ではないか

 スポーツ科学部でスポーツに関する様々な分野の授業がありましたが、「スポーツコーチング論」という授業で、檜山康先生(現亜細亜大学体育会サッカー部コーチ)から、「一般の社会で全ての企業にはビジョン、ミッション、理念がある。しかし、日本のスポーツクラブではそれらが希薄である」という指摘がありました。

 それからスイッチが入ったように、日本を代表するような大企業のホームページと、Jクラブはもちろん様々なスポーツクラブのホームページを比較、研究しました。

 一気に霧が晴れて視界が広がりました。

 社会との繋がりこそが「仕事」なんだ。

 考えてみれば当たり前のことですが、競争の世界に身を置いていると忘れてしまうことがあります。

 目の前のことに一生懸命になるあまり、自分を取り巻く環境やその前提が見えなくなってしまう。

 だから時には立ち止まって視野を広げてみて、自分の仕事に向き合うことが大切なのだと思います。

 また早稲田大学ア式蹴球部では、部の目標やスローガン、組織形態や規則まで「学生主体」となって4年生が作ります。

 当時の部には「日本一」「関東リーグ優勝」という目標、「WASEDA the 1st」という哲学はあったものの、ビジョン、ミッション、理念は全く存在していませんでした。

 これこそまさに自己満足ではないか。

 自分自身が盲目的になっていた恥ずかしさも混ざり、大きなショックを受けました。

 高校生までなら良いかもしれません。学校が決めた目標、規律に従ってがむしゃらに部活動に励み、自分を磨く。理不尽を含めた様々な経験が、人としての基礎体力、精神力を鍛えてくれるでしょう。

 ですが社会人になるまでの最終段階の大学生が、学校がその場を与えてくれるからといって、自分たちの自己満足のためだけに貴重な4年間を過ごして良いのだろうか。

 それに早稲田大学ア式蹴球部には、サッカー界のみならずどの業界にも偉大なOBの方々がいらっしゃります。

 早稲田だから歴史があるのではなく、大学の中でタイトルを多く獲得してきたから伝統があるのではなく、それぞれの時代の中でしのぎを削り、社会に出てから様々な困難の中でも業界の先頭に立ち、変革を起こしてきた先人たちのおかげで早稲田大学ア式蹴球部に価値がある。

 自分にとってのサッカーが、ただただプレーすることではなく、「社会にどんな価値を提供できるのか」と大きな変化が起こりました。

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