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J1 2か月前

残留争いで愚痴を言うのか、黙々と自分にできることを取り組むのか。プロになって気づいた現役Jリーガーの「在り方」と「魅せ方」【コラム】

シリーズ:コラム text by 岡田優希 photo by Getty Images

現実は「結果がすべて」。でも…

 サッカーキャリアをリスタートした宮崎から、同点に追いつくゴールや逆転弾を決めることが増えました。

「在り方」と「魅せ方」が揃うと、負けている状況や難しい試合展開になると、自然とスイッチが入ります。

 むしろそういう中でゴールを決めることが選手としての価値を上げると思っています。
5-0の試合の6点目より、0-0の拮抗した試合の1ゴールや、0-1の試合を1-1にする1ゴールの方が多くの人に喜んでくれる。

 だからといって、勝っている状況で手を抜いたり、油断することはない。

 困難な状況を解決することの重要性をものすごく認識して、ゴールを取るためにさらにギアを上げるということです。

 しかし、

「現実はそうじゃない。」
「自分にコントロールできない人間関係、契約、実績、立場などプレーじゃないところで多くが決まる。」
「そうは言ったって、結果を出せば全て肯定される。」

 こんな声が聞こえてきそうだし、実際自分の中でもこだまします。

 でも、自分には全力でサッカーをプレーできる環境がある。

 ドイツから帰国後で無所属の中、2022年のJ1リーグの開幕を観たあの時の「プレーする場所のない」自分を痛感した、言葉にできない感情から、今は有り難くプレーで自分を表現できる場所がある。

 基本的にJクラブの年棒は当月払いです。町田との契約が2022年1月31日までだったので2月は給料がありません。

 給料がないということは社会に参画していない、あるいは価値を提供できていないということであり、自分で決めた道ではあったものの、いざ直面すると無力さや不甲斐なさ、社会の中に居場所がないような孤独を感じました。

 それに加えて当時はまだ帰国後にホテルで6日間の隔離があり、それもまた孤独感を増幅させるものでした。

 そんな中J1リーグが開幕し、色々なチームの試合を観ている中で、「自分には現時点でサッカーをする場所がないんだ」ということを痛感しました。

 この時の胸の痛みは今でも覚えています。

 プレーができる場所があるということがどんなに幸せなことか。

 勝ち負けや、スタメンかサブかメンバー外か、練習がきついとかだるいとか、それらは全てプレーする環境があってこそです。

 プレーできなければ自分を表現する場所もないし、人生を切り開いていくチャンスすらない。

 大人になれば色々なしがらみがあるけれど、少なくとも今目の前にあるピッチでは自由なはずです。

 この痛みが今も自分を律してくれて、前に進むパワーを与えてくれていると感じます。

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