「僕らは1対1をし続けているように感じる」
ボールを保持しているチームがある。ボールの持ち手(出し手)がいて、受け手がいる。2人以外に9人の選手がピッチにいるはずなのだが、まるで存在感がない。パスを出す、パスを受ける。またパスを出す、パスを受ける。
「彼らはサッカーをしているけど、僕らは1対1をし続けているように感じる」
メキシコ代表に敗れて4位に終わった東京五輪で、田中碧はそう言っていたが、湘南もそれに似ていた。
相手からしてみると対応しやすい。出し手と受け手を見てればいい。だが、サッカーは11人でやるスポーツ。ボールを持っていない10人は常にボールを受けるか、関わるための動きをしていないといけない。たとえボールが来なくても、その動きが相手を惑わせる。
山口監督が指摘する準備の遅さはそれを指しているのではないだろうか。3人目、4人目は果たしてプレーに関与する準備ができていたのか。その拙さや緩慢な態度が目立った。
背後を取ろう。それが湘南の狙いだった。リーグ戦初先発となった渡邊啓吾はその役割を愚直に繰り返した。インサイドハーフの平岡大陽も何度も背後に走った。
よく言えば素直だし、悪く言えば単調すぎる。真面目にといえば聞こえはいいが、決断に責任を持っていないようにも映る。指示通り動けばいいだろう。そんなふうにも見える。
小野瀬康介もそこを問題だと認識していた。