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コラム 3週間前

鎌田大地が時々やっている。サッカー日本代表が増やすべきビルドアップの選択肢。マンツーマン守備を難しくさせる方法【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

 サッカー日本代表は14日、国際親善試合としてガーナ代表と対戦し、2-0の快勝を収めた。ショートカウンターからの2得点は、来年に控えるFIFAワールドカップ(W杯)で勝ち点「3」を得るための想定として理想的だ。3バックをはじめとする機能性の高い守備組織がそれを実現したが、次に考えるべきポイントはどこか。(文:西部謙司)
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確実に勝つための試合ができた

サッカー日本代表
【写真:田中伸弥】

 ワールドカップ(W杯)への準備としては、グループステージで勝点3をとるべき相手に確実に勝つためのテストだった。数人の主力を欠いていたガーナ代表に対して、日本代表は危なげなく2-0で勝利している。

 3バックのセンターを務めた谷口彰悟が素晴らしかった。マンマークでハイプレスを行う日本は、3バックが相手とカバーリングなしに1対1の状況になることが多い。

 マンマークでプレスされた時の定石として、ガーナはトップにロングボールを蹴ってきたが、谷口がことごとく跳ね返した。空中戦、地上戦とも圧倒的だった。

 CB左の鈴木淳之介は何年も代表でプレーしてきたかのような堂々たるプレーぶり。攻守において存在感を示し、負傷者が復帰してきても簡単にレギュラーポジションを渡すことはないだろう。

 守備の強さだけでなくボールを持っても落ち着いていて、ボールを隠してのターンに安定感があり、接近戦になっても慌てない。

 5バックで引かれた時には前線を効果的にサポート。プレスされてもかわせる、引かれた時には釣りだせる。戦術的にポイントになる能力が高いのは魅力だ。

 パラグアイ代表戦、ブラジル代表戦では負傷者続出で懸念されたDF陣だったが、今回は連係も良く個々の強さも示していて安定感があった。

 ボールを保持して押し込み、失ったら即時のプレスで奪回、回収。相手に攻撃させず、自分たちは攻撃を継続する。確実に勝利するためのプレー循環ができていた。ボールを持っていてもいなくても、常に相手ゴールに脅威を与える形になっていた。

高い守備の機能性

 マンツーマンのハイプレスは日本の武器だ。南野拓実の先制点、堂安律の追加点はともに敵陣で奪ってからのショートカウンターだった。

 ロングボールを寸断されたガーナは、前半の終わりごろからGKを経由したビルドアップを試みて前進できるようになっている。

 マンマークでフィールドプレーヤー全員を抑えられても攻撃側はGKがいるので1人の数的優位がある。

 ガーナはGKにプレスさせ、フリーになったフィールドプレーヤーにつなぎながらの前進を図ったわけだ。

 少しプレスの強度が落ちてきた時間帯でもあり、日本ははじめて後退してのブロック形成に移行している。

 GK経由のビルドアップはマンマークハイプレスへの対策としては定石なので、これをやられた時の対応は明確にしておきたい。

 日本のミドルゾーンでの守備は完全な5-4-1ではなく、5-2-3に近い形でいつでもハイプレスに移行できる形になっていた。

 ハイプレスとハイプレス移行込みの中盤ブロック、この2つでほぼ用が足りていたので、今回はブラジル代表戦の課題として残っていたローブロックの守備についてはよくわからなかったが、それだけ守備はよく機能していた。

 後半に選手交代をしても守備の機能性は維持されていてチームとして浸透している。

5バック想定とプレス回避

 勝点3がマストとなるような相手との試合は、引かれることを想定しなければならない。

 ガーナが早々に引いたこともあり、日本は難なく敵陣内へボールを運べている。そこから久保建英のスルーパス、中村敬斗のクロスボール、上田綺世の裏への飛び出しなど、いくつかの攻め手はみせていた。

 しかし、得点はいずれも奪ってからのショートカウンターで、ポゼッションからの決定機自体も少なかった。伊東純也、三笘薫が負傷で招集外のため、2人の特別な個の力を使えなかった影響はあるだろう。

 5-4-1で引かれた場合、5-4のローブロックの手前はがら空きなので、ここを上手く使えるかどうか。CB左の鈴木はその点で頼りになりそうだった。

 前半に南野へのスルーパスを供給、後半にもポジションをウイングバックに変えてからだが、藤田譲瑠チマへ決定的なパスを送っていた。右は定番の堂安、久保のコンビがあるので、鈴木の左が加われば攻め込みの下準備はスムーズにできそうだ。

 ガーナのハイプレスに対しては上田へのロングボール、堂安と久保のコンビネーションからカウンターへ移行。GKを経由してのフリーマン創出によるパスワークも問題なさそうにみえた。

 ここからさらに戦い方の幅を広げるなら、前線から引いて受ける動きだ。トップ近くの選手が中盤あるいはディフェンスライン近くまで下がった場合、相手のCBがそこまでついていかずにフリーになりやすい。

 米国代表戦では相手のクリスチャン・プリシッチにこれをやられていて、クラブチームだがバイエルン・ミュンヘンではハリー・ケインとセルジュ・ニャブリの2人が下りるケースがある。

 引くFWと入れ替わりにMFが上がるので、これにマンツーマンでついていくと守備側のCBとMFがそっくり入れ替わってしまうので対処が難しいのだ。

 鎌田大地が時々これをやっている。ビルドアップの形の1つとして定着させれば、GK経由の数的優位確保、トップへのロングボールの3つを持てる。

 日本はサイドに長身選手がいないのでサイドへのロングボールは使えず、すべてのボールを引き取れるようなボランチもいないので、ビルドアップの出口はできる範囲で増やしておいた方が良いと思う。

(文:西部謙司)

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【了】

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