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J1 3週間前

「お前が行けという感じだったので…」蹴り直し直前の佐々木大樹が抱いたある思い。ヴィッセル神戸は「これを基準にしていかないと」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

 FC町田ゼルビアは16日の天皇杯JFA第105回全日本サッカー選手権大会・準決勝でFC東京を延長戦の末2−0で撃破した。その大舞台で強烈な存在感を示したのが、日本代表でも注目を集める望月ヘンリー海輝だ。持ち味の高さと強さに、成長著しいメンタリティが加わった充実の120分。クラブ史上初のタイトル、そしてその先に見据えるワールドカップへ、望月は着実に歩みを進めている。(取材・文:元川悦子)[2/2ページ]
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「何かそこを狙おうと…」

「僕が直前にPKを止めていた、というのもあって、真ん中のコースをぶち抜いてくるかなと思っていました。なので、心理戦のなかで真ん中もある、というところで少し(重心を)残していたんですけど」

 何度も対峙してきたからこそ、佐々木の心理状態も読めると大迫敬は試合後に振り返った。

 しかし、佐々木はいたって純粋だったというか、キッカーを任せられた喜びで駆け引きなどの類をはるかに超越した思いを抱いていた。大迫勇とまったく同じコースへ蹴った意図を、こんな言葉とともに明かしている。

「同じコースへ蹴った、という感覚はなかったです。何かそこを狙おうと、蹴る直前に思っていました」

 全身で喜びを表現している佐々木のもとへ、真っ先に駆けつけてきた大迫勇からゴールを祝福された直後。ゴール裏で狂喜乱舞している神戸のファン・サポーターへ向けて背中を見せながら、佐々木は今シーズンから志願して背負っている神戸のエースナンバーの「13番」を誇らしげに左右の親指で指さした。

 まさに無我夢中で、気がついたときには繰り出したゴールパフォーマンスの意味をこう明かした。

「今シーズンから『13番』を受け取らせてもらって、自分のなかではまだまだ満足できていない結果しか残せていないんですけど、それでも今日に関しては決勝に進める可能性が大きくなったかな、というダメ押し点だったので、少しは『13番』らしいプレーをできたのかなと思って多分やったんだと思います」

 ちょうど1週間前の11月9日。場所も同じパナソニックスタジアム吹田で、ガンバ大阪と対峙したJ1リーグ第36節を1-1で引き分けた瞬間に、神戸のリーグ戦3連覇の可能性が消滅した。

 冷たい雨が降りしきるなかで、89分に同点ゴールを決めたのは途中出場していた佐々木。鹿島アントラーズに次ぐ史上2チーム目の偉業が潰える悔しさを抱えながら、すぐに前を向いたと振り返る。

「これを基準にしていかないと…」

「気持ちを切り替えて、天皇杯を獲る、というところだけに集中してきました。タイトルを獲り続けて、これを基準にしていかないと、チームとしてこれから先、よくなっていかないと思っているので。このチームの未来をさらによくしていくためにも、そういうもの(タイトル獲得)を大事にしてきたい」

 2023シーズンに悲願のリーグ戦初優勝を達成。昨シーズンには連覇を達成し、天皇杯との二冠達成で花を添えた。

 だからこそ、神戸の歩みを今シーズンで途切れさせるわけにはいかない。連覇達成への挑戦権を得るための広島との準決勝を乗り越えたいま、佐々木はチーム全員の思いを代弁するように決意を新たにした。

「タカさんからは『今日は決勝だと思って戦え』と言われていたし、その気持ちが勝利につながった。この気持ちをそのまま決勝にもっていけば、必ず優勝を手にできると思っています」

 22日に国立競技場で行われる決勝の相手は、初タイトルを狙うFC町田ゼルビアに決まった。

 勝ち上がりに大きく貢献した昨シーズン。天皇杯男という異名に複雑な表情を浮かべていた佐々木は「今回ばかりは天皇杯男と呼ばせたいですね」と、フル回転で連覇に貢献する自身の姿を早くも思い浮かべている。

(取材・文:藤江直人)

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【了】

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