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コラム 2週間前

数年前は“俺が俺が”。今は違う。サッカー日本代表の堂安律は変わった。「自分が0点でも…」らしくない思いを抱く理由【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

 サッカー日本代表は18日、国際親善試合でボリビア代表と対戦して3-0で快勝した。この試合で途中出場ながら勝利に貢献したのが堂安律。数年前の彼なら、おそらく2試合連続のスタメンでないことにストレスを抱えていただろう。しかし、今は違う。良い意味で、堂安らしくない思いが芽生えてきた。(取材・文:元川悦子)[2/2ページ]
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「“自分らしくない思い”が出てきたのは…」

「昨日も滉君とか拓実君と話したんですけど、自分のパフォーマンスがどうであれ、やっぱりW杯で勝ちたいという思いが強い。それが自分の理想としている姿じゃなくても、泥臭くても、チームに貢献したいというのは全選手が思っていること。

 心の底からそう思わないとバレるし、他の人にも伝わらない。狙ってやっていることはないです」

 その変化を誰よりもよく分かっているのが、この日采配100戦目だった森保監督だ。

 指揮官は10月のブラジル戦後の単独インタビューで「『個人のギラギラ』と『チームのために』というのを上手に考えられた例として浮かぶのは、カタールW杯の時の律ですね」と自ら率先して言い出したのだ。

「2021年3月のカタールW杯最終予選で代表を外れた頃の律は『俺を使え』『1人で相手を倒してやる』というメンタリティだった。

 その律がドイツ戦の逆転勝利の後、『相手はピッチ内の11人だけで戦っているけど、俺らはベンチ含めて26人で勝った』と言ったんです」と指揮官は嬉しそうに語ったのである。

「僕はカタールW杯で2点を取れたけど、『もっと点を取りたい』という感覚にはならなかった。自分が0点でもチームとしてベスト8以上に行きたかった。“自分らしくない思い”が出てきたのはまさに新しい一面ですね」と堂安本人も苦笑する。

 だが、その献身性とフォア・ザ・チーム精神があったからこそ、今回の北中米W杯最終予選無得点という結果にも苛立つことなく、右WBとして攻守両面でハードワークをし続けられたのだ。

 スター気質を持つ男が縁の下の力持ちになれる集団はやはり強い。そこが第2次森保体制、そして2025年の代表の大きな進化と言えるかもしれない。

 全員が黒子になれる日本代表はブラジル戦から3連勝し、勝負の2026年を迎えることになる。

 堂安自身も今夏赴いたフランクフルトでより実績を残し、一回りも二回りもスケールアップして、7か月後の大舞台に向かってほしい。

 実際、本大会で躍進しようと思うなら、彼自身がカタールW杯の2ゴールを上回る結果を残すことはマスト。貪欲に泥臭く高い領域を追い求めていくことが肝要だ。

(取材・文:元川悦子)

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【了】
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