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J2 2週間前

ベガルタ仙台は「ちょっとずつ疎かになってる」。奥山政幸は1歩引いた視点で課題を見つめる「選択肢を持つことで…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 小林健志 photo by Getty Images

 未曾有の大混戦となった今季のJ1昇格争い。明治安田J2リーグ第36節を終え、残り2試合になった時点でもJ1昇格を決めたチームがない。現在6位のベガルタ仙台は第36節・ロアッソ熊本戦に勝利し、J1昇格プレーオフ圏内に踏みとどまった。この混戦の中、ベテランDFの奥山政幸はピッチ内外で冷静さを保ち、チームに落ち着きを与えている。(取材・文:小林健志)[1/2ページ]
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課題は守備の立て直し。活躍が期待されたベテランの奥山政幸

ベガルタ仙台 奥山政幸

【写真:Getty Images】

 大詰めを迎えたJ1昇格争い。9月は負けなしと好調だったベガルタ仙台だったが、10月に入り、昇格争いのライバルであるRB大宮アルディージャに敗れ、下位の大分トリニータ相手に0-0のスコアレスドローを喫し、再び苦しい立場となった。

 10月26日の第34節・サガン鳥栖戦は先に2点を奪われ、さらにDF石尾陸登が退場するという絶体絶命のピンチが訪れたが、FW宮崎鴻の2ゴールと、終盤のFW小林心のゴールで劇的な逆転勝利を挙げる。

 しかし、11月2日の第35節・FC今治戦では宮崎のゴールで先制するも、守備がハマらず前半だけで3失点。後半にMF郷家友太のゴールで1点差に詰め寄ったが、3-2で敗れた。

 J1自動昇格のため、スパートをかけたかった時期にもう一つ波に乗りきれず、今治戦終了時点でJ1昇格プレーオフ圏内の一番下の順位である6位に。11月9日の第36節・ロアッソ熊本戦は、敗れればプレーオフ圏外へと順位が後退する可能性が高い一戦となった。

 こういう焦れやすい状況では、やはりベテラン選手の存在が大きなものとなる。森山佳郎監督就任後は若手選手主体のチームとなっている仙台だが、現在38歳のGK林彰洋は守護神として絶大な存在感を見せている。

 そして、フィールドプレーヤーでは、左サイドバックを務める32歳のDF奥山政幸が粘り強い守備とハードワークを持ち味として、存在感を見せている。

 奥山は名古屋グランパスU-18出身で早稲田大学に進学。卒業後はレノファ山口FCでプロキャリアをスタートさせた。

 奥山が存在感を見せたのはその翌年、FC町田ゼルビアに移籍してからだった。献身的な上下動を惜しまず、攻撃にも守備にも顔を出すサイドバックとして活躍し続け、2023年にはJ1昇格にも大きく貢献した。

 ところが、J1昇格後は激しいポジション争いの中で出場機会が減少。そして、昨年8月に仙台へと期限付き移籍を果たした。J2リーグ戦10試合に出場し、活躍を見せたことで、今季から完全移籍し、副キャプテンを務めるなどチームメイトの信頼は厚い。

 今季は同じ左サイドバックの石尾やDF石井隼太らとの競争がある中、守備的に戦いたい試合などで積極的に先発起用されてきた。

 とりわけ直近2試合は石尾が出場停止ということもあって、活躍が期待される状況だった。その1試合目となった今治戦は思うように守備がハマらず3失点で敗戦。その前の鳥栖戦も劇的勝利ではあったが2失点を喫し、2試合連続複数失点となったことから、熊本戦に向けては守備の立て直しが課題となっていた。

「ちょっとずつ疎かになってしまってる」奥山政幸が守備の立て直しへ見直したこと

「取りに行くところで、ちょっと剥がされてという部分はあるので、プレッシャーのかけ方ももちろんそうですし、そこを外された時に、今までは本当に全員で体を投げ出して守った部分が、ちょっとずつ疎かになってしまってる面もあると思うので、そこは見直したいなと思います」

 奥山は今治戦を振り返り、前からのプレッシャーのかけ方と、最後のゴール前で体を張る部分を課題に挙げた。

 そして、どんな相手でもボールを保持して戦おうとしてくる熊本戦に向けてはある程度ボールを持たれる展開も想定していた。

「ボールを持つことに関してはJ2でも本当にトップクラスだと思うので、もちろんそこを分断するというところも大事だとは思います。でも、本当に思うように取れない展開になってしまうこともあると思うので、そこはしっかり肝を据えてじゃないですけど、ある程度持たれるのもしょうがないと思います」
 
 ボールを持たれることも頭に入れながら、さらに念頭に置いていたのは最終的にフィニッシュに行かせないことだ。

「もちろん最初からそうやって(ボールを)持たれて、相手にボールを持たれるのを許しすぎるわけじゃないですけど、でもそういう展開もあるなというのは、事前に分かっておくだけでも精神的な負荷というのも全然違うと思います。

 しっかり最終的にゴールをやられなければ良いので、そういうサッカーの本質的なところ、ゴールを奪う、守るというところはもう1回フォーカスしたいなと思います」

 それでもいざピッチに立つと、J1昇格のために絶対に勝たなければというプレッシャーが襲いかかるものだ。

 こうした状況でのメンタルのあり方について奥山に問うと、こんな答えが返ってきた。

「単純にサッカーを楽しむというところは持ってないといけない」

「シーズン終盤になるとどうしても肩に力が入るという状況にはなってきてしまうと思うので、もちろん全力ではやるんですけど、ちょっと1歩引いて、という感覚も持っておかないといけないなと思います。

 ゲーム中の修正というところも含めて、他の選手もそうですが、僕とかアキ(林彰洋)とか、そういったところがもっと中心となってやっていかないといけないかなと思います」

 自身の他、林も含めてベテラン選手でチームを落ち着かせようとしていた。

「全力を出すことは大事ですけど、全部が全部100%でやっても、逆にそれは相手も読みやすいことだと思うので、ちょっとだけ余裕を持って選択肢を何個か持つということによって、相手もそれに対応しづらくなると思います」と気持ちに余裕を持つことの重要性を語った。

「元々サッカーは楽しくてやっていたものなので、こういう状況でなかなか難しいですけど、単純にサッカーを楽しむというところは持ってないといけないかなと思います」

 いつもハードワークをして、生真面目な印象のある奥山だが、こういう時こそサッカーを心から楽しむという原点を大事にしようとしていた。

 若手選手を見ていて力が入っているように見えるか問うと、「力入ってるなって感じますし、逆にもっともっと力入れてもいいなって場面もあると思います」と力が入り過ぎている時と、逆に力を入れるべきところで入っていない時の両方があるという。

「でも、全力でやっているのを止めるというのもなかなか難しいので、僕自身がちょっとポジショニングを変えたりとか、ボールを持った時にあえて前に行かずに落ち着かせたりとかでコントロールができると思うので、そこは意識的にやりたいなと思います」とプレッシャーに苦しむ若い選手を助けるプレーを出そうと意気込んでいた。

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