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J2 1か月前

だからこそ、西野奨太は感情を抑えきれなかった。「お前がもっと…」高嶺朋樹の存在が北海道コンサドーレ札幌で変わるキッカケに【コラム】

シリーズ:コラム text by 黒川広人 photo by Getty Images

 今季、最も成長した北海道コンサドーレ札幌の選手は誰か。その問いに多くのサポーターが西野奨太と答えるはずだ。飛躍を遂げた21歳は、J1昇格の可能性が絶たれたジェフユナイテッド千葉戦後、ピッチで涙を流し、自身の不甲斐なさやプロとしての責任を胸に刻んだ。その覚悟の裏には同じ下部組織出身でキャプテンの高嶺朋樹の存在があった。(取材・文:黒川広人)[1/2ページ]
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西野奨太が飛躍を遂げた裏に2つの軸での変化あり

北海道コンサドーレ札幌DF西野奨太
【写真:Getty Images】


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 攻守に欠かせない存在になりつつある西野奨太は今季、リーグ戦28試合に出場するなどキャリアハイを記録している。高校2年でトップ昇格を果たして以来、過去3年半のリーグ戦で積み重ねてきた累計出場数をこの1年で一気に上回るほどの飛躍を遂げた。

「ずっと目標にしていたコンサドーレのエンブレムを背負って、ピッチで戦う。それが叶った意味では充実した1年になったと思います。

 ただ、試合に出ている立場として、チームをJ1昇格に導けなかった責任を感じていますし、いろんな感情が入り混じるシーズンでもありました。それでも、成長の手応えはしっかりとあります」

 彼のブレイクの裏には「身体」と「心」の2つの軸での変化がある。

 まずはフィジカル面。西野と共に肉体改造に取り組んできたフィジカルコーチ・山田修市氏も、その成長ぶりに太鼓判を押す。

「自分は若手組を中心に見ていますが、特に(西野)奨太と(木戸)柊摩は今シーズン、身体が大きく変化した2選手だと感じています。ボディコンタクトの強さはスピードと重さで決まりますが、スピードが武器でない奨太にとっては、重さがなければ当たり負けしてしまう。

 そこで、身体を大きくし、出力を上げる基礎作りの1年としてプログラムを進めてきました。実際、試合でもその成果が現れており、プロ仕様の体になってきたと思います」

 西野もその変化を実感している。

「チームを勝たせるために自分の力をどう活かすか?」

「実は体重自体は(カマタマーレ)讃岐にいた昨シーズンと変わってないんです。でも、見た目が『デカくなった』ってよく言われます(笑)。プレー面での変化をすごく感じていて、50-50の場面では『絶対に自分のボールにできる』という自信が今はあります。腕で抑える感覚やフィジカルで勝てる感覚が身につきました。これは昨年までにはなかった感覚です」

 もう一つの変化は「心」だ。アカデミー時代から継続的に西野に話を聞かせてもらっているが、今シーズンの途中から西野の発する言葉に明らかな変化を感じた。

 以前は「どう自分が活躍するか?」に焦点を当てていた西野が(若手選手はそれでいいと筆者は思っている)、今では「チームを勝たせるために自分の力をどう活かすか?」という視座で物事を捉え始めている。それらが彼の言葉の節々から伝わってくるようになったのだ。

「本当にその通りで、“試合に出始めあるある”かもしれませんが、最初は自分が試合に出たいという気持ちがすべてでした。毎試合毎試合、自分のプレーに一喜一憂して、『よし、これで次も出られるかな!』って浅はかな気持ちでやっていたと思います。

 でも、試合に継続的に出るようになってから、チームが上手くいかない時間を経験し、『どうすればチームはよくなるか?』、『どんなプレーをしたら勝たせられるのか?』と少しずつ考え方が変わってきました。やっぱり(高嶺)朋樹くんの姿を見てきたことが大きなキッカケだったと思います。今シーズンそのことに気づけたのは本当に良かったです」

 西野の変化の火付け役ともなった高嶺朋樹の存在。高嶺は、西野を始めとした後輩たちの成長を促し、クラブをより良い方向へ導くべく、ピッチ内外で奮闘している。

「お前がもっと率先して若手を引っ張っていかなきゃいけない」高嶺朋樹からもらった金言

「最近も朋樹くんと来年以降のことを話す機会があったんですが、『同年代で試合に出ている奨太がどんな姿勢で練習に取り組んでいるか、試合で何を示せるか。責任感を持って若手に見せていかないとダメだよ。チームが良くなるためにも、お前がもっと率先して若手を引っ張っていかなきゃいけない』と言ってくれたんです。

 朋樹くんに若手のことをいつまでも言わせているのは違うと思いますし、このチームは彼に頼りすぎている部分が多いと思います。だからこそ、もっと自分が彼の負担も減らし、チームを引っ張っていく存在にならなきゃいけないって、強く思うようになりました」


 リスペクトするキャプテンの熱い想いを受け止め、自身が北海道コンサドーレ札幌を引っ張る覚悟を決めていたからこそ、水戸ホーリーホックとジェフユナイテッド千葉に連敗し、J1昇格の可能性が潰えると、西野は自身の感情を抑えることができなかった。

「本当に“悔しい”って言葉じゃ表現できない感情でした…。今シーズン、ここぞという試合をことごとく落としてきたので。不甲斐ない気持ちでいっぱいでしたし、サポーターの皆さんに申し訳ない気持ちでしかなかったです。それで試合後、感情が抑えきれなくなってしまいました」

 J1昇格争いの終盤、西野は上位陣との対戦を通して、多くのことを学んだ。

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