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J1 2週間前

「いつもの僕らなら…」武藤嘉紀らが感じたヴィッセル神戸の異変。町田が「あれだけの選手を揃えていると…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

 第105回天皇杯・決勝戦が22日に行われ、ヴィッセル神戸はFC町田ゼルビアと対戦した。前回王者の神戸は連覇を狙ったが、初の主要タイトル獲得を目指す町田を相手に1-3で敗北。昨季J1リーグMVPの武藤嘉紀は、今季の不完全燃焼感を来季以降に繋げるべく、厳しく自身を見つめ直した。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]

エース・大迫勇也をベンチに置いたヴィッセル神戸

武藤嘉紀 ヴィッセル神戸
【写真:Getty Images】

 2023、2024年とJ1を連覇し、2024年は天皇杯も獲得した王者・ヴィッセル神戸。しかしながら、2025年は最終節を前にJ1優勝争いから脱落。YBCルヴァンカップも準々決勝で横浜FCに敗れており、残された国内タイトルは天皇杯のみとなった。

 こうした中、昨季王者が11月22日に迎えたのが、東京・国立競技場で行われたファイナル、FC町田ゼルビア戦だった。

 クラブ初タイトルに燃える相手を撃破し、近年の日本サッカー界をリードしてきたトップクラブとしての意地と誇りを示せるのか。神戸にとっては非常に重要な戦いとなったのだ。

 吉田孝行監督が送り出した先発は、1週間前の16日の準決勝・サンフレッチェ広島戦と全く同じ。エース・大迫勇也は今回も控えだ。

「延長まで見据えた上で、少しジョーカーの役割、流れを変える選手を置いておきたかった」というのが指揮官の意図だったようだが、今季の彼はケガがちでフル稼働できていない。

 コンディションを見極めたうえでベンチスタートという判断になったのだろう。大迫がスタメン入りしなかったからこそ、彼らはスタートからギアを上げて挑む必要があった。

 けれども、「開始15分が勝負」という意識は町田の方が圧倒的に強かった。

「痛かったのは最初の失点ですね」

「やっていてもいつもの自分たちじゃないなと感じました。選手1人ひとりが自信を持ってプレーできていないという印象がありました」

 キャプテンマークを巻く山川哲史も違和感を覚えたというが、そのまま開始6分に先制点を奪われてしまう。

 きっかけは町田のスローイン。いったんは神戸がクリアしたが、こぼれ球を中山雄太に拾われ、スルスルとドリブルで駆け上がられ、折り返された。

 次の瞬間、ゴール前に飛び込んだのが藤尾翔太。GK前川黛也も飛び出し、マテウス・トゥーレルらも反応しようとしたが、シュートはネットを揺らし、堅守の神戸がまさかの失点を食らってしまう。

「痛かったのは最初の失点ですね。立ち上がりのタイミングが悪すぎて。一番行こうとしている時の失点だったんで」と2024年MVPの武藤嘉紀も大きなダメージを受けたという。

 そこから神戸としては反撃の機会を窺おうとしたが、町田の球際と寄せの強さ、攻守の切り替えの素早さには及ばない。全体にギアが上がり切らないという印象の中、32分に2点目を失ってしまう。

 これも町田にこぼれ球を拾われ、藤尾、ミッチェル・デュークとつながり、見事なスルーパスが出て、相馬勇紀がフィニッシュ。電光石火のカウンターを仕留められてしまったのだ。

「この2点目も、もう1回自分たちが取りに行こうっていうタイミングでの失点だった。2-0になると、相手も上がってこないし、あれだけの選手を揃えているとこじ開けるのが相当難しくなる。厳しかったですね」

 武藤もそう言って厳しい表情を浮かべるしかなかった。

「いつもの僕らならそこで耐えられるのに…」

 実際、ここまでの神戸は持ち味の守備強度や反応の鋭さ、タテへの推進力をほとんど出せなかった。

「特に前半の30分は相手に全部前向きに行かれていた。いつもの僕らならそこで耐えられるのに、ポコンと入れられてしまった。

 そうなると、これだけの大舞台では流れを変えるのが難しいものになってしまう」と背番号11も抗えないムードを感じていた様子だ。

 それでも、大迫が出てきた後半は神戸らしいロングボールを使った攻めで、町田の守備組織を打開できそうな雰囲気も漂った。

 相手キャプテン・昌子源も「大迫君が入った瞬間、『ああこれやな、神戸のサッカーって』と感じた」と神妙な面持ちで話したほどだ。

 そこで1点でも先に返していたら、まだチャンスがあったかもしれない。

 だが、神戸は56分に致命傷の3点目を食らってしまう。

 スローインからのボールを奪い合いに敗れると、林幸多郎から藤尾につながれ、町田のストライカーに豪快な左足シュートを決められる。これで勝敗がほぼ決した。

 神戸はその後、宮代大聖が一矢報いる得点を挙げ、3-1にしたものの、追い上げもここまで。タイムアップの瞬間、天皇杯連覇の夢が断たれるのと同時に、今季国内無冠が確定した。

 武藤は今季の不完全燃焼感について、来季以降の戦いに繋げようと考えている。

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