インタビューに答える横浜F・マリノスの角田涼太朗【写真:編集部】
横浜F・マリノスは11月30日、明治安田J1リーグ第37節でセレッソ大阪と対戦する。この日はホーム最終戦で、現時点で4万枚以上の発券があり、クラブは5万人以上の来場者を目指している。ホーム最終戦を前にこの夏、古巣に復帰した角田涼太朗にこの試合にかける思いやここまでの歩みを聞いた。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
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J1残留決定からおよそ3週間…角田涼太朗の今の思い
横浜F・マリノスの角田涼太朗【写真:Getty images】
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「まずは率直にほっとしているのはあります。それでもこれが最低ラインなので、そこからどう来年に向けていくかというところがもうスタートしているので、ずっと喜んでいるわけにもいかないですし、残留で喜んでいるようなチームになっちゃいけないと思うので、ごちゃまぜな気持ちという感じですかね」
横浜F・マリノスは11月9日、アウェイで京都サンガF.C.に0-3で勝利し、J1残留を決めた。
あれからおよそ3週間が経ち、角田涼太朗の中では当然、素直に喜びたい部分とそこで甘んじてはいけないという相反する気持ちが入り混じっているようだった。
それもそのはずだろう。角田は8月7日、イングランド3部のカーディフ・シティFCから完全移籍でおよそ1年半ぶりに古巣復帰を果たした。
加入会見では「絶対に(J2に)落ちてはいけないクラブだと思います。僕自身はチームを助けるために帰ってきている」と発言していたのだから。
加入からここまでのおよそ3か月半を振り返り、「本当に毎日充実している。個人的にも今すごくサッカーを楽しむこともできている状況だなと思います」とチームとして大切なものをかけて戦ってきた日々も含めて良い時間だという。
思えば、F・マリノスの今季は文字通り、非常に苦しいシーズンだった。
シーズン序盤から黒星が先行し、降格圏に低迷すると、4月に元イングランド代表ヘッドコーチのスティーブ・ホーランド監督が電撃解任された。
その後も成績は上がらず、最下位に陥落。リーグ戦でクラブワーストの7連敗を喫し、6月にはパトリック・キスノーボ監督の退任が発表された。シーズン2度目となる監督交代はその事態の重さが表れているかのようだった。
その後、大島秀夫ヘッドコーチが監督に就任。夏の移籍期間でこれまでチームを支えてきたアンデルソン・ロペスやヤン・マテウス、エウベルらが退団した一方で、角田のほか、谷村海那やディーン・デイビッド、ジョルディ・クルークスらが新たにチームに加わった。
角田が加入した当時、F・マリノスは降格圏の18位で残留争い真っ只中だった。
残留を掴むにあたって、角田の中でターニングポイントなった試合と出来事がある。
「このままだとまずいという空気がチームにできた」「そういう人を悲しませてはいけない」
横浜F・マリノスの角田涼太朗【写真:Getty Images】
まず、その試合とは9月13日の川崎フロンターレ戦だ。
角田は開始4分、自陣で相手をかわして前線へパスを送る。しかし、そのボールは奪われ、そのまま自身の頭上を越えるパスを通されてしまう。先制のゴールを許してしまった。
「チームとしてもホームで0-3で負けてしまいましたし、個人としてもミスがありました。あの試合でこのままだとまずいという空気がチームにできたと思うので、そこから残留するためにどうやって割り切ってサッカーをするかというところにもつながった」
その後の2失点に直接関与したわけではなかったが、勝たなければならない状況で守備の要として失点を防ぐことができなかったことを悔いていた。
そして、もうひとつの出来事が10月18日の浦和レッズ戦の前に行われたという選手間によるミーティングだ。選手から厳しい意見が飛び交い、角田自身もそうした発言をした記憶があるという。
「選手はもしJ2に落ちたら移籍もできますし、違う選択肢を取ることもできます。ただ、チームを応援してくれているサポーターの皆さんは本当にそのチームのことだけを応援している人も多いと思いますし、このチームが全ての人も多いと思うので、そういう人を悲しませてはいけないよねって。
選手は落ちたら移籍すればいいとか、そんなことを考えているようでは良いプレーもできないし、チームのためにも戦えないというところは話しました。それは本当にみんなが感じている部分だったし、僕自身もどちら側の意見も理解はできる。今その瞬間をこのチームのために戦えないと、その先選手として成功できるのかというと違うのではないかというところもあった」
それだけ全員が必死で、チームのためにという思いが強かったのだろう。互いに意見をぶつけ合ったことでチームとしてよりまとまった感じがあったという。
F・マリノスはミーティング後の浦和戦から3連勝を飾り、見事J1残留を手繰り寄せた。
角田涼太朗が語る直近3連勝の要因と自身のプレーぶり
【写真:編集部】
「(ミーティングが)直接繋がったかはわからないですけれど、浦和戦からチームとしてより洗練された戦い方ができたと思います。よりその執念みたいなものを見ていても感じることができたので、1つそれもポイントではあったかなと思います」
角田は直近の3連勝の要因を「本当に全員がハードワークして戦っている結果だと思いますし、全員がやることを理解して、徹底した戦い方をできているのが結果につながっているのかなと思います」と分析した。
積極的なハイプレスからボールを奪い、チャンスにつなげたかと思えば、割り切ったロングボールと集中力の高い守備で相手を苦しめる。理想とする戦い方ではないかもしれないが、角田の言うように最後まで強度を落とさなかった。
ここまでの自身のプレーぶりについてはこう語る。
「守備の面ではかなり手応えがありますし、そこまでやられたイメージも今はないです。攻撃の部分は今チームとしてやっていることがあって、自分の特徴を出すよりは本当にチームのために割り切った部分になりますけれど、得点に繋げられた場面も自分で得点した場面もある。もっとチームには貢献したいですけれど、最低限のことはできたと思っています」
センターバックながら9試合出場で2ゴール1アシスト。会見で話した「チームを助けるために帰ってきている」という言葉通り、J1残留の救世主のひとりといっても過言ではない。
角田をここまで突き動かすのはクラブへの変わらぬ思いだ。