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J2 5日前

ジェフユナイテッド千葉に「特別な選手はいない」。鈴木大輔の言葉の意味。J1昇格お預けでも「幸せなことだと…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 石田達也 photo by Getty Images

 明治安田J2リーグ第38節が11月29日に各地で行われ、3位・ジェフユナイテッド千葉はホームでFC今治と対戦し5-0で勝利を飾った。J1自動昇格には届かなかったが、3位という結果をポジティブに捉えJ1昇格プレーオフに向け全力を注ぐ。主将のDF鈴木大輔にチームのストロングとプレーオフに向けての熱い思いを聞いた。(取材・文:石田達也)[1/2ページ]
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「みんなで泣いて喜ぼうぜ!」

ジェフユナイテッド市原・千葉所属DF鈴木大輔
【写真:Getty Images】

 終わってみれば、1ポイントが足りなかった。

 試合後の会見で小林慶行監督は、この試合の結果を受けて「悔いはないです。やれることをやってきたからこその自負があります」と振り返った。

 最終節前の順位は、勝点69で首位を走るV・ファーレン長崎、同67の2位・水戸ホーリーホック、そして同66の3位・ジェフユナイテッド千葉と続いていた。

 結果次第では、J2優勝&J1自動昇格の可能性を残して迎えた最終節。千葉はFC今治に5-0で圧勝したが最終順位は3位となり、J1昇格プレーオフに回ることになった。

 フクダ電子アリーナ史上最多となる1万9000人以上が詰めかけた大一番。今治はホームチームへの揺さぶりとホーム側の大声援を嫌い、コイントスに勝つとエンドチェンジを選択する。

 お互いのサポーターが陣取るゴール方向へ向かう形でのスタートになった。

 しかし千葉の選手に動じる様子はなかった。

 キャプテンのDF鈴木大輔は円陣を組むと「みんなで泣いて喜ぼうぜ!」と声をかけポジションにつき、試合開始のホイッスルからエンジン全開で今治に襲い掛かった。

 11分、FW石川大地がペナルティーエリア内のFWカルリーニョス・ジュニオへスルーパスを送ると、たまらず相手選手がファウル。PKを獲得した。

 ブラジル人FWが自らキッカーを務めると、相手キーパーの動きを見て冷静に右足で流し込み、先制する。

鈴木大輔の躍動「自分たちは上しか見ていない」

 千葉は今治のテンポ良いビルドアップに対して守勢に回る時間が続いていたが、相手に傾きかけた流れを、頼れるキャプテンが引き寄せる。

 31分、右サイドで得たフリーキックのチャンスで、MF田口泰士がゴール前に送る。これに反応した鈴木が、ゾーンの網をすり抜けヘディングシュートで追加点を決めた。

「上手く周りの選手たちがスペースを作ってくれたこと、泰士のボールがキーパーを迷わせるボールだったので入ると思っていました」と千葉の13番は語り、「かなり準備も意識もしていたので狙い通りでしたし、相手が勇気を持つ時間帯に得点を獲れたのは大きかったと思います」と続ける。

 今治は、つなぐことに加え、前進もできるチームだ。千葉がプレッシャーに出た時に剥がされそうなシーンも多かったが、「そこを耐えて、後ろで取った時には前が空き、カウンターが有効だと想定していた」と言う。

 その後も鈴木はゴール前に入ってくるボールをクリアするだけでなく、危険なスペースを埋め、今治の前線でプレーするFWウェズレイ・タンキとのバトルにも競り勝ち自由を奪う。

 そしてプレーが止まれば最終ラインの選手に声をかけ、意思の共有を図っていく。

「勝てば何か起きるかというところですし、自分たちは上しか見ていない」と背番号13の背中からは強い覚悟が滲み出ていた。

 また、サイドバックとして鈴木の隣でプレーするDF髙橋壱晟はキャプテンの存在感についてこう述べる。

5-0大勝。その大きな要因とは?

「普段から試合に対して、しっかり準備している選手ですし、そういう選手に最後はボールが転がってくる。大輔さんの存在は大きいですし、一言でチームを同じ方向に向かせることができる発言力があります」

 前半を2-0で終えた時点では、(徳島1-0長崎、水戸0-0大分のため)千葉の逆転優勝が微かに見えるなか、指揮官は「自分たちがやるべきことを続けよう」とハーフタイムに指示を与える。

 すると、後半頭の46分にはMF杉山直宏のクロスでオウンゴールを誘発して3点目を重ねる。

 そして74分には右サイドから展開し、田口、MFエドゥアルドとテンポ良くつなぎ、最後は石川が左足でフィニッシュ。さらに85分には敵陣でビルドアップを引っかけると、エドゥアルドがゴールから約40メートルほどの位置から右足を振り抜き5点目を奪った。

 完勝につながった要因を鈴木は次のように言う。

「会場全体の雰囲気で最初から圧倒することができた。相手がコートチェンジをしてきましたが、自分たちのサポーター側に攻めることで、最初から圧力をかけられるところはあったので全開で行こうと。

 前半から畳みかけ、勝負を決める勢いでいくことを話していましたし、それができたことが大きかったと思っています」

 試合後はチーム、サポーターも他会場の結果を待ったが、水戸が勝利し、長崎が引き分けたため、千葉に吉報は届かなかった。

 鈴木は、悔しさを嚙みしめながらも顔を上げた。試合後のミックスゾーンでは落ち着いた口調で振り返った。

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