横浜F・マリノスは11月30日、明治安田J1リーグ第37節でセレッソ大阪と対戦し、3-1で勝利している。8月にベガルタ仙台から完全移籍で加入したオナイウ情滋だが、この試合までのリーグ戦での出場はわずか72分。セレッソ戦でチャンスが巡ってきたオナイウが下した決断に焦点を当てる。(取材・文:藤井雅彦)[1/2ページ]
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横浜F・マリノスのサッカーに不可欠な「ゲームチェンジャー」
大島秀夫監督に名前を呼ばれて、ユニフォーム姿になる。後半39分からの途中出場にMFオナイウ情滋は昂っていた。リードしているとはいえ、現在のスコアは2-1。何が起きるかまったくわからない点差だ。セレッソ大阪にトドメを刺す得点がほしかった。
J1残留を決めた前節の京都サンガF.C.戦ではMF天野純が途中出場で得点を記録。前々節のサンフレッチェ広島戦でも同じく途中出場の天野が決めている。チーム内で「ゲームチェンジャー」と呼ばれる役割の働きが大きな意味を持つのは明らかだった。
「大島監督のサッカーは途中から出場する選手たちがエネルギーやパワーをもたらさないと成り立たない。しっかりとウォーミングアップからピッチに戦う選手と一緒になって戦うことをやっている。自分も含めてみんながそれを意識できているので、途中出場の選手が勢いをもたらせていると思う」
気合い十分のオナイウがピッチに立った。
「選択肢はいくつかあった」。その中でオナイウ情滋が下した決断
最大の見せ場が訪れたのは出場からわずか4分後の後半43分。ハーフウェーライン手前でDF角田涼太朗からの浮き球のパスを受けたオナイウがゆっくりとドリブルを開始した。横浜F・マリノスのカウンターアタックが始まる。
左前方にはアタッカー陣のFW谷村海那、MF天野純、MFユーリ・アラウージョが走り込む。背後からはDF加藤蓮がオーバーラップを仕掛け、右側を追い越して最前線へ。
オナイウには、すべてが見えていた。
「選択肢はいくつかあった。(加藤)蓮くんが走っているのもわかっていたけど、それによって相手もちょっと寄ってくれた。でもツノくん(角田涼太朗)からボールをもらった瞬間からシュートを考えていたし、自分で行くことしか考えていなかった」
相手DFが距離を詰めてこないことを察知すると、ペナルティエリアの外から迷いなく右足を振り抜く。強烈な無回転シュートが枠内へ飛んだ。しかしGK福井光輝の指先をかすめ、バーに弾かれる。オナイウは手で顔を覆い、悔しさを露にした。
「パスを選択しても、見ている人は面白くない。シュートを打てない選手は…」
感触はたしかにあった。
「打った感覚としても入ったかなと思ったし、悪くないコースではあるけど、入らなかったら得点じゃない。決められるかどうかは練習あるのみ。あれを得点にできる選手になれるように、また練習していきたい」
強気な選択はアグレッシブさをウリとするオナイウの真骨頂でもある。パスを出せば得点に結びついていたかもしれないが、それは結果論に過ぎない。自分自身で得点を狙ったアクションに後悔など一切ない。
「ああいうシーンでシュートを打つ選択は、チームに貢献したいという気持ちと自分が結果を出したいという気持ちを中和させた中で良い判断ができたと思っている。
あそこでパスを選択しても、見ている人は面白くない。あの場面で思い切ってシュートを打てない選手はアタッカーとしてどうなのかを考えたときに、やっぱり面白くない。だからハーフウェーラインの手前でボールをもらった時に、振り抜くと決めていた」



