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「J1の試合をフクアリで」はアカデミー全員の気持ち。ジェフ千葉、新星・姫野誠がクラブを変える。「お世話になったので」【コラム】

シリーズ:コラム text by 石田達也 photo by Getty Images
姫野誠 ジェフ千葉

値千金の同点弾をあげた姫野誠【写真:Getty Images】



 J1昇格プレーオフ準決勝がフクダ電子アリーナで7日に行われ、ジェフユナイテッド千葉はRB大宮アルディージャと対戦し、4-3で勝利した。事実上の決勝点をあげたのは、プロ契約を締結したばかりのMF姫野誠。その若武者はスター性と大物感を漂わせながら新時代の扉を開いて行く。(取材・文:石田達也)[1/2ページ]
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正念場で大抜擢された17歳のニューヒーロー

姫野誠 ジェフ千葉
躍動する姫野誠【写真:Getty images】

 同点ゴールが決まった瞬間、17歳の若武者が咆哮を上げた――。

 前日にメンバー入りを告げられたというMF姫野誠は「練習から(試合を)意識してプレーしていたので、自分が入ると知った時には“やってやろう”という思いが強かったです」と胸の内を明かした。

 2025明治安田J2リーグを年間順位3位で終えたジェフユナイテッド千葉は、6位のRB大宮アルディージャと引き分けても、J1昇格プレーオフ決勝に進める状況だった。

 加えてホーム開催というアドバンテージを抱えていたが、20分にコーナーキックから失点。

 32分にはミドルシュートを叩き込まれ、後半頭の48分にもミドルを決められるなど、3点のビハインドを背負う苦しい展開になる。



 そのなか、ベンチには経験や実績のあるメンバーもいたのだが、小林慶行監督が60分、最初の交代カードとして選んだのが、ジェフユナイテッド千葉U-12からアカデミーに所属し、8月22日に2種登録され、10月16日にプロ契約を締結したばかりの姫野だった。

「状況が状況でしたし、何か状況を一変させたいという気持ちはありました。

 マコ(姫野)に関しては、トレーニングのところからクオリティーの高さを見せていましたし、彼はU-17ワールドカップという一つの目標があって、それが終わった段階で合流しました」

 小林監督はそう話す。少しの疲労感も見えていたそうだが、決断の理由を次のように続けた。

小林監督が大一番で姫野誠を抜擢した理由

小林慶行
勝負師としての勘が冴え渡った小林慶行監督【写真:Getty images】

「今週は目の色を変えて、明らかに自分がメンバーに入るんだという気持ちが伝わる姿勢があったということです。パフォーマンスとアタッカーとして数字を出したことは年齢に関係なくすごいと思います」。

 そのU-17W杯で日本代表は準々決勝でオーストリア代表と対戦し、0-1で敗戦した。

 オーストリア戦を含め4試合に出場した姫野は「悔しい経験をしました。それを意味ある大会にしようと練習していましたし、この悔しさを良い方向にもっていこうと思っていた」と述べると、指揮官の抜擢にプレーで応えた。

【4-4-2】の左サイドハーフに構えると、62分にはゴール前にドリブルでカットインし、FW石川大地とのパス交換から左足でシュートを放つ。ファーストタッチから見せ場を作った。



 米倉は明確な姿勢を示し、流れを作った後輩に「17歳の子が出てくることでスタジアムの雰囲気は盛り上がっただろうし、あいつが1本目で見せたシュートで、“こいつやるな”という雰囲気をチームに与えてくれた」と言い切る。

 すると千葉は71分にFWカルリーニョス・ジュニオが鮮やかな右足ボレーをねじ込み反撃の狼煙を上げると、77分にはMFエドゥアルドがミドルシュートを突き刺す。

 1点差に迫ったスタジアムのボルテージは最高潮に達する。

「狙ったシュートではなかったのですが…」

ジェフユナイテッド千葉 カルリーニョス・ジュニオ

反撃の口火を切ったカルリーニョス・ジュニオ【写真:Getty images】

 イケイケムードのなか姫野は右サイドハーフにポジションを移すと、82分にはGK若原智哉からのロングフィードを受けペナルティーエリア内に侵入すると左足を強振。これは惜しくもサイドネットとなったが、「自分にとっていいリズムになったかなと思います」と振り返る。

 その1分後にはFW呉屋大翔が競り合い、米倉が左足でつないだパスを姫野が相手ディフェンダー2枚に挟まれながらドリブルで突き進む。

 もつれながら左足で打ったループシュートがゴール左隅へ決まり、値千金となる3-3の同点弾となった。



 局面を打開し、独力で突破する。どちらのサイドでも苦にしない「自分の特長」を示して見せた。

「狙ったシュートではなかったのですが、入ったので良かったと思っています。米倉さんが見てくれていたので、それをゴールという形にできたのは良かったです」

 これがプロデビュー戦。チームを救う技術と判断が重なり合ったゴールは、あっぱれとしか言いようのない結果となった。

 姫野に3点差となったビハインドを「どう見ていたのか」と聞いてみると、力強い言葉が返ってきた。

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