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「また会える日を楽しみに。アリガトウ」ファン・アラーノがどん底に沈むガンバ大阪に来て3年半、「できることはやり切った」【コラム】

シリーズ:コラム text by 高村美砂 photo by Getty Images
胴上げされるガンバ大阪MFファン・アラーノ
胴上げされるガンバ大阪MFファン・アラーノ【写真:Getty Images】



 ガンバ大阪は5日、ファン・アラーノの契約満了を発表した。2022年途中に加入し、3年半でリーグ戦86試合に出場。外国籍選手ながら昨季から副キャプテンを担うなど、チームに多大な影響を与えたブラジル人MFは「チームのためにできることはやり切った」と言い、感謝の気持ちと誇りを胸にガンバを去る。(取材・文:高村美砂)[1/2ページ]
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ガンバ大阪のために「できることはやり切った」

ガンバ大阪 ファン・アラーノ
ファン・アラーノは今季限りでガンバ大阪を退団する【写真:Getty Images】

 クラブから今シーズン限りでの契約満了が発表された翌日。12月6日に行われたJ1リーグ最終節・東京ヴェルディ戦後のホーム最終戦セレモニーで挨拶に立ったガンバ大阪のファン・アラーノは、スタンドを見上げて感極まり、声を詰まらせた。その背中を押すように、再び「ファン・アラーノ!」の声援がスタンドから届けられる。アラーノらしく、その挨拶は支えてくれた方たちへの『感謝』から始まった。

「最初に、皆さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います。強化部の皆さん、社長、そしてメディカルスタッフ、テクニカルスタッフ。3年半一緒にプレーしてくれたチームメイトの皆さん。そして僕にとって特別な、サポーターの皆さん。ありがとうございます。


 最初、ガンバに来るとき、自分がどれだけチームの力になれるのか、不安な気持ちを抱えていました。その中でチームのために自分のベストを尽くし、チームのためにできることはやり切ったという気持ちが今あって、すごく幸せな気持ちも持っています。

 皆さんはチームの心、中心にいる存在で、僕たちがやってきた難しいことは皆さんの力なしでは成し遂げられなかったと思います。僕はこのガンバのユニフォームに、副キャプテンという役割を与えてもらったことに、すごく誇りを持っています。ありがとうございました」

 終始涙を浮かべて言葉を紡いだ彼に、サポーターが昨年から歌われ始めたアラーノの個人チャントで想いを返す。アラーノが「大きなサプライズで、すごく嬉しい。作ってくれたサポーターの皆さんの気持ちに応えられるようにさらにモチベーション高くプレーしたい」と喜んでいた、あのチャントだ。その数分間に、彼がガンバで過ごした3年半が色濃く映し出されていた。

ガンバ大阪の苦境を乗り越えるため

湘南ベルマーレ戦前のガンバ大阪MFファン・アラーノ
ファン・アラーノは主将・宇佐美貴史とともにガンバ大阪を牽引した【写真:Getty Images】

 遡ること3年前の22年7月31日。鹿島アントラーズからの完全移籍が発表された。その時点(第23節)でのガンバの成績は5勝7分11敗の15位。しかも、17位・ヴィッセル神戸との勝点差はわずかに1と、いつ降格圏に順位を落としてもおかしくないようなチーム状況だったが、8月3日の加入会見に臨んだ彼は「正直、偉大なビッグクラブ、ガンバの今のチーム状況に驚いている」とした上で、「ガンバの攻撃の力になりたい」と目を輝かせた。

「逆境に立ち向かっていくチャレンジは決して嫌いではない。だからこそガンバでの新たなチャレンジにワクワクしています。

 こうしたチーム状況を変えるためには、誰か一人は大きなパワーを出せるけど、誰かは全く力を発揮できていないということがあってはいけない。チームの全員が、僕を含めた一人一人がチームのために持ちうる力をすべて出し切らなければいけないし、それが1つにまとまった時にチームには途轍もなく大きなエネルギーが生まれ、それが必ずチーム状況の変化に繋がっていく。だからこそ、チームの全員でこの状況を乗り越えていきたいと思っています」


 この3年半、まさにその言葉を体現し続けてきた。

 特に22年は、どことなくチームがバラバラで、外国籍選手もうまくチームの輪に入りきれていない状況を感じていたからだろう。最終節で残留を確定させたシーズンを乗り越えた23年以降は、より積極的に外国籍選手同士、あるいは外国籍選手と日本人選手の仲を取り持つような役割を果たしながら、『チームのために』ということを意識した発言が目立った。

 そうした姿がポヤトス監督や仲間の信頼を掴み、2024年には副キャプテンに就任。彼にとっては日本のキャリアでは初めての大役だった。

「キャプテンの貴史(宇佐美)だけに責任を背負わせるのではなく…」

ガンバ大阪 ファン・アラーノ
ファン・アラーノは昨季から2シーズン副主将としてガンバ大阪を引っ張った【写真:Getty Images】

「テクニカルスタッフやチームメイトが僕を信頼してくれて、副キャプテンを任せていただいたことをすごく嬉しく思っています。ピッチの内外で自分にできることを出し切りたい。

 キャプテンの貴史(宇佐美)だけに責任を背負わせるのではなく、僕もしっかりと責任を感じて、ガンバをより良い方向に向かわせるためのサポートをしていこうと思っています。もう一人の副キャプテン、シン(中谷進之介)を含めお互いのいいところを出し合い、足りないところを補いながら仕事をし、それをガンバが勝つための力にしていきたいです」

 その思いは、光となり影となってチームの細部まで行き渡った。新外国籍選手が加入すれば真っ先に歩み寄り、チームの輪に引き入れる役割を担っていたのも印象的だ。それも「ガンバガカツタメ」。ガンバに加入してから、日本在住のブラジル人が作った日本語学習のキットで勉強を続けてきたこともピッチ内外での助けになった。


「外国人に限らず、選手が新たなクラブに加入する時は緊張したり、不安になったりするもの。サッカーをすることに変わりはないとはいえ、新たなことにチャレンジという点において慣れないことがたくさん出てくるのは当然だと思う。

 その不安を少しでも和らげるために、できるだけ多くのコミュニケーションを図ることは意識していますし、ピッチ内だけではなくプライベートにおいても困っていることがないか、いろんな話をするように心掛けています」

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