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J1 2日前

「来年以降の目標に」角田涼太朗は横浜F・マリノスをいるべき場所へ「言うよりもやるのは難しくて苦しい時間も長かった」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤井雅彦 photo by Getty Images
横浜F・マリノスDF角田涼太朗
横浜F・マリノスDF角田涼太朗【写真:Getty Images】



残留争いを強いられていた横浜F・マリノスに、角田涼太朗が加入した。かつてレジェンドが背負った背番号22をつけ、土俵際でマリノスの危機を救う活躍を見せた。1年半ぶりに帰ってきた角田は今季を振り返りつつ、未来へと目をやる。(取材・文:藤井雅彦)[1/2ページ]
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「行くしかない」角田涼太朗は突き進んだ

横浜F・マリノス 角田涼太朗
横浜F・マリノスDF角田涼太朗【写真:編集部】

 目の前でJ1リーグ制覇を決められてしまった最終節の鹿島アントラーズ戦。0-2とビハインドの状況で、MF天野純がチームとして一矢報いるゴールを決めた。アシストしたのは後半途中からポジションを左サイドバックに変えたDF角田涼太朗だった。

 自陣左サイドのタッチライン際でボールを持つ。視界には複数の相手選手がいた。パスでいなすこともできたが、背番号22が選んだプレーは独力での突破だった。

「シンプルにチームとして点を取りたかった。あの場面は数的不利だったので良い判断だったかは置いておいて、でも自分の中では行くしかないと思ってのプレーだった」


 ボールを奪われてしまえば、たちまちピンチになっていただろう。そのリスクを厭わずに力強く前進する。

 相手選手のプレッシャーをはねのけ、気合いと根性で局面を打開すると、反対サイドへ鋭いロングパスを通す。ボールを受けた天野は前へ出てきた日本代表GK早川友基をあざ笑うかのようなループシュートでゴールネットを揺らした。

「気持ちでどうにかならないものがある中でやっぱり…」

横浜F・マリノス 角田涼太朗

横浜F・マリノスの角田涼太朗【写真:Getty Images】

 試合後、厳しい表情を崩さずに言った。

「ポジションは変わったけど前に行く姿勢を見せないと意味がないというか、もったいない。チームとしては全然足りなかったけど、ゴールというひとつの形になったのはよかった」

 苦しい90分だった。

 鹿島アントラーズの出足の鋭さと迫力に後手を踏む。球際の勝負でことごとく敗れた横浜F・マリノスはまったくと言っていいほど主導権を握れない。4連勝で臨んだ勢いは、通用しなかった。


「1試合通して鹿島にやりたいことをやられた試合だった。チームとしても個人としてもここ数試合の姿を見せることができていなかった」

 対戦相手は勝てば自力で優勝を決められる条件で、最高の舞台設定と言えよう。対して横浜F・マリノスは、いわば消化試合。プレーするのは機械ではなく人間なのだから、モチベーションの違いには抗えないものがある。

「ひとつのボールへの執念で上回られてしまったと感じたし、前半から球際で負けることも多かった。優勝を目指す上ではそこが大事だと再確認した。シンプルに選手の質で負けた部分もあったし、気持ちでどうにかならないことがある中でやっぱり気持ちは大事。そういった意味で今日、鹿島は勝つべくして勝ったんじゃないかなと思う」

 完敗を認めざるをえない試合が、角田の脳裏に深く刻み込まれた。

「言うよりもやるのは難しくて、本当に苦しい時間も長かった」

横浜F・マリノス 角田涼太朗

インタビューに答える横浜F・マリノスの角田涼太朗(2025年11月撮影)【写真:編集部】

 今夏の再加入は強い決意の表れだった。

 念願の海外移籍を果たしたのが2024年1月のこと。しかし1年半過ごした海外で半分以上の時間をリハビリに費やした。得られた経験や自信はかけがえのないものだが、サッカー選手としての日常を取り戻すためにプロ入りしたクラブへの帰還を自らの意思で決めた。

 J1残留というタスクを完遂した京都サンガF.C.戦後の言葉が印象的だ。


「僕はもちろんのこと、このクラブに関わるすべての人が待っていた日だと思うし、時間はかかってしまったけどそれをこのメンバーで成し遂げられた。目指すべきものではなかったけど、最低限よかったかなと思う。

 自分で選んだことで、このクラブに帰ってくる決断をした時点で、マリノスをJ1に残すことしか考えていなかった。でも言うよりもやるのは難しくて、本当に苦しい時間も長かった。本当によかったという言葉しか出てこない」

 横浜F・マリノスのためにすべてを捧げた。再加入直後のこと。久しぶりにピッチに立った清水エスパルス戦での接触プレーで左膝を負傷し、内側側副靱帯を痛めてしまった。以降は早期復帰を目指し、懸命にリハビリに取り組んだ。

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