北海道コンサドーレ札幌から名古屋グランパスへの移籍が発表された高嶺朋樹【写真:Getty Images】
2025年、海外クラブからJ2の北海道コンサドーレ札幌に電撃復帰した高嶺朋樹は、キャプテンとして獅子奮迅の活躍を見せた。本職のボランチに戻った第19節・FC今治戦以降は17試合で10得点。だが、高嶺の頑張りもむなしく、目標に掲げていた札幌のJ1昇格には届かなかった。シーズン終了後、悩みに悩み抜いた高嶺が選択した道は名古屋グランパスへの移籍だった。高嶺が札幌で過ごした“特別な1年”を明かしてくれた。(取材・文:黒川広人)[1/2ページ]
「正直、特別でした」 高嶺朋樹が振り返る2025年
9年ぶりのJ2の舞台で戦った今季、12位に終わった北海道コンサドーレ札幌【写真:Getty Images】
北海道コンサドーレ札幌のエンブレムを再び背負って戦った1年を高嶺に振り返ってもらうと、言葉を慎重に紡いでくれた。
「正直、特別でした。やっぱり特別でしたよ。綺麗ごとっぽく聞こえるかもしれませんが、このエンブレムを背負って戦ったから、今年はキャリアハイの活躍ができたと思っています。キャプテンをやって使命感も生まれたし、人間的にも選手としても成長できた1年だったなと思っています」
チームは開幕から4連敗と最悪の船出となった。高嶺自身もシーズン序盤はセンターバックや両サイドバックなど本職であるボランチ以外のポジションも担い、思うようなパフォーマンスを発揮できない試合が続いた。
「試合に出る前、震えたりもしましたね。今までそんなこと一度もなかったんですが、海外からJ2に来て、違いを見せなきゃいけない立場でプレッシャーも感じていました。サポーターからの期待もすごく感じていた中で、自分のパフォーマンスが出せない。少し思い詰めていたと思います。
でも結局、自分がどういう立ち振る舞いをするかでしか、未来は変えられないと思っていた。常に練習から100%以上でやっていたし、手を抜いたりとかは一切なかったと思います。チームメイトもどんどん俺を信頼してくれるようになって、ただただ、チームのためにというふうに考えられるようになりました。その積み重ねがちょっとずつ成功体験に繋がったのかなと思います」
好転の一つのキッカケを、高嶺が教えてくれた。
「俺がもっとやらなきゃいけない」。高嶺朋樹にそう思わせた出来事とは?
6月15日のFC今治戦でプレーする北海道コンサドーレ札幌の高嶺朋樹【写真:Getty Images】
「自分のメンタリティとサッカーの部分がつながった感覚があったのは、やっぱり6月の(FC)今治戦なのかなと思います。というのも、今治戦の少し前の試合を終えたときにサポーターと話す機会があったんです。自分の気持ちとプレーが一致し出したのは、それがあってからのように思うんです。サポーターと話して悔しかったんですよ。俺がもっとやらなきゃいけないと思った記憶があります」
同じ頃、高嶺が練習からチームメイトに基準を上げることを求める声も増したように感じた。
「やっぱりパフォーマンスが良くない選手に言われたとしても微妙だと思うんです。自分ができていないのに言うのは違うのかな、という思いも少なからずありました。それでも要求していた方だと思うんですけど、自分のプレーが良くなってきて、より要求できるようになったというか。プレーで見せられている分、周りに言えるようになったっていうのはあったかもしれないです」
高嶺の想いの根底にあるのは、現状への危機感だ。
「J2の現状に対して、どれだけ危機感を持っているのかなという思いがありました。J2で試合に出ていないことに対しての危機感ですね。J2で試合に出てない。次はJ3や、自分たちより下のチームに行かなきゃいけないっていう、プロとしての厳しさをみんなちゃんと持っているのかなって。
上の選手に言うというよりは若手の選手たちがどういう危機感を持ってやれているのかっていうところと、それをスタッフの方たちが引き上げようとしているのか、に物足りなさを感じたのは事実です」
それは、自分自身がピッチ内外で札幌の昇格のためにすべての力を注いでいる自負があることへの裏返しでもあった。
高嶺朋樹が「サッカー選手として当たり前のこと」を若手に求め続けた先に…
トレーニングに励む北海道コンサドーレ札幌の高嶺朋樹(左)と西野奨太(右)【写真:編集部】
「今年で終わりじゃないので。それは常に思っています。今が最後じゃないというか、未来の自分に向かって今何ができるかっていうところの結局は積み重ねだから。自分自身、大学時代にもケガが何度かあったので。いつケガをしても後悔しないような準備をしっかり徹底するようにしています。
練習が終わった後の筋トレだったり、やって後悔することはない。それは自分の中で決めていることというか。プロとして、常にサッカーを第一に考えた行動を徹底し、継続するのは当たり前のことかなと思うんです」
だからこそ、たとえ口うるさいと思われようが、若手選手の日常の基準を上げることにも心血を注いできた。
「練習への向き合い方も常に言ってきました。練習の最初で徐々に体を作ってメインの練習に入るんじゃない。練習前の準備をしっかりして、最初のパスコン(パス&コントロール)からマックスでできるようにする。サッカー選手として当たり前のことなんだけど、それをできない選手に対して僕は強く求めたし、食事の取り方、練習後のトレーニング、ケアに関しての対応もすごく言ってきたつもりではあります」
変化の一端は、徐々に生まれ出している。
「まだまだ量は少ないのかもしれないけど、(木戸)柊摩や西野(奨太)、(林田)友兜などは徐々に変わってきているんじゃないかなと思います。でも、もっともっとやらないと。だって、今のカテゴリーはJ2なんです。自分たちの現状をしっかりと認識しないとダメだと思います。
結局は自分で本質的に気づかないとダメなんです。トレーナーから言われた量だけなら足りない側面もあると思います。自分で限界がどのくらいか、早めにわかった方が良いと思います」と言い、自身の話も交えてこう続けた。