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Jリーグ 7日前

「お金を残すのは当たり前」高嶺朋樹が移籍を決めた今、伝えたいこと。北海道コンサドーレ札幌に捧げた1年の真相【独占インタビュー後編】

シリーズ:コラム text by 黒川広人 photo by Getty Images,Editor
北海道コンサドーレ札幌 高嶺朋樹

北海道コンサドーレ札幌から名古屋グランパスへの移籍が発表された高嶺朋樹【写真:Getty Images】



 2025年、海外クラブからJ2の北海道コンサドーレ札幌に電撃復帰した高嶺朋樹は、キャプテンとして獅子奮迅の活躍を見せた。本職のボランチに戻った第19節・FC今治戦以降は17試合で10得点。だが、高嶺の頑張りもむなしく、目標に掲げていた札幌のJ1昇格には届かなかった。シーズン終了後、悩みに悩み抜いた高嶺が選択した道は名古屋グランパスへの移籍だった。高嶺が札幌で過ごした“特別な1年”を明かしてくれた。(取材・文:黒川広人)[2/2ページ]

「札幌のおかげで今の自分があるのは間違いないし、帰ってきて1年、また成長できた」

北海道コンサドーレ札幌 高嶺朋樹

3季ぶりに古巣・北海道コンサドーレ札幌に復帰した今季、キャプテンとして攻守でチームを引っ張った高嶺朋樹【写真:編集部】

「僕のルーキーイヤーの2020年のときは本当に試合に出るのに必死だった。レベルが高い中、どうやって試合に出るのか考え続けていました。その中でレギュラー組との差を埋めるには練習以外のところしかないと。僕は3部練習とかして、帯状疱疹になったこともありました。あれはやりすぎたなと思ったし、そういうのもあって、自分のやりすぎたら良くないラインもわかるようになりました。

 同期の(金子)拓郎も(田中)駿汰もめちゃくちゃ負けず嫌いだったので、練習中もスタッフの人と言い合いとかもめちゃくちゃしていました。やっぱり日常からどれだけ本気でやれるかが大事だと思います。プロとして、常にサッカーを第一に考えた行動を徹底する。

 明日練習があるから今日の夜ご飯はここの時間までに絶対帰ろうとか。常にサッカーがあることを考えて行動するのが本当に大事だと思います。その上で若手だけじゃなく全選手が試合に出られていないことに対する焦りを持たなきゃいけない。また、今J2で試合に出ているからいいんじゃなくて、目指す基準をもっと上に置いて生活し、切磋琢磨するのが大事なのかなと思います」

 そんな高嶺の振る舞いやエネルギーを、サポーターも当然感じていたはずだ。ジュビロ磐田戦で待望の個人応援歌も披露され、高嶺自身、その歌詞をしっかりと把握している。



「すごく格好いいですよね。“札幌で一緒にタイトルを”っていうことだと感じていたし、今年帰ってきた意味をファン・サポーターも理解してくれていたんだと思います。それもあってかなり考えましたね。最終戦のときの横断幕だったりとか、自分に期待してくれているサポーターがすごく多くいた中で、それを裏切るような形になってしまったのは本当に心が痛いし、申し訳なく思っています。

 ただ、札幌のおかげで今の自分があるのは間違いないし、帰ってきて1年、また成長できたのは、この札幌でプレーしたおかげなので。それは、このクラブを引っ張っていきたい想いだとか、ファン・サポーターの応援があってのことだった。本当に感謝しています、というのは伝えたいです」

 高嶺のクラブへの想いは、金銭面にも表れている。国内移籍では稀有とも言える大きな違約金が札幌に入る形となった。

1年前の札幌復帰の決断をいま問う。「俺の中では特別なクラブなのは変わらない」

北海道コンサドーレ札幌 高嶺朋樹

北海道コンサドーレ札幌の下部組織で育った高嶺朋樹【写真:編集部】

「自分はアカデミー出身でもあるので。長年、お世話になっている立場として移籍するなら、札幌にお金を残すのは当たり前のことだと思うし、できるだけ多く札幌に残せるようにしてほしいっていうのはリクエストしていました。それは当然です」

 その想いを活かしていくクラブの変化も感じている。

「石水(創)さんが社長になって、現場に出てくる回数も多くなって、現場のことをすごく理解してくれていると感じます。その中で河合竜二さんがGMになって、社長とGMの距離感もすごくいいと思いますし、実際に僕も話させてもらって『本当にこのチームを変えたいと思っている』っていう話をしてもらいました。監督も新しくなって、チームとして本当に転換期を迎えるタイミングだと思います。本気で変えようとしてるタイミングだなって」

 1年前の札幌復帰の決断に、後悔する瞬間はなかったのかと聞くと、間髪入れずに高嶺が言った。



「まったくないです。チームを昇格させることができなかった責任はすごく感じているけど、札幌に戻ってくる決断に後悔したことは一度たりともないですね。俺の中では特別なクラブなのは変わらないし、それは一生変わらないですね」

 小学4年生から赤黒のユニフォームを身に纏い、共に多くの苦楽を味わってきた。

 その中でも2025シーズンのプレーは高嶺にとって、特別な時間だった。

「チームのためにすべての力を捧げて戦い抜いた1年は…」。高嶺朋樹がファン・サポーターに伝えたいこと

北海道コンサドーレ札幌 高嶺朋樹

2025年6月、本サイトのインタビューに答える北海道コンサドーレ札幌の高嶺朋樹【写真:編集部】

「これまでのシーズンとは全然違いました。今年に関してはチームが勝てるようになるにはどうしなきゃいけないのかを考え続けた1年でした。日頃の私生活も含めて、言っていることとやっていることの矛盾があったら、チームメイトもついてきてくれないと思ったので、そういうのを考えてすごく行動をしていたし、言葉も発していました。そうやった結果、自分が成長していったように思います。

 自分は小学校から札幌ドームに試合を観に行っていましたし、札幌が強くなっていく様子を見てきました。その中で自分が今度は応援される側になって、やっぱりファン・サポーターの力はすごいなと思うし、皆さんが応援するチームを変えられないのに、今回の選択は本当に申し訳ないなっていう思いです。ただ、このチームのために、すべての力を捧げて戦い抜いたこの1年は、自分の中ではかけがえのない時間でした」

 最後に言い残したことはあるか、高嶺に問いかけた。



「札幌には本当に感謝しています。このクラブがなければ今の自分はありません。決断を尊重してくれた強化部の方やチームに携わる皆さん、そしてファン・サポーターの皆さんやパートナー企業の方々と直接触れ合う中で、皆様の想いの大きさを強く感じました。その想いを胸に、これから前へ進んでいきたいと思います。それだけは、しっかりと伝えたいです」

 多くの想いを受け止め、高嶺は新たな挑戦へと歩み出す。後ろを振り返らず、自分の描く未来を信じ、闘い続けてほしい。その生き様を、後輩たちも、そして、サポーターもきっとどこかで見ているはずだ。

(取材・文:黒川広人)

【著者プロフィール:黒川広人】
北海道出身。大学卒業後、フジテレビで番組制作を担当。2018年よりDAZNにてJリーグ関連の番組制作に携わる。2022年からは株式会社dscに所属し、Jリーグ、Jクラブ、WEリーグをはじめとする各種スポーツ団体の映像ディレクション業務を担当。また、地元・北海道を中心に学生年代の取材活動も精力的に行う。

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【了】
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