「2026 ベガルタ仙台 新加入選手記者会見」でフォトセッションに臨む森山佳郎監督たち【写真:小林健志】
昨季は多くの期間でJ1昇格プレーオフ圏内を維持しながら、最終節でいわきFCに敗れ、7位でプレーオフ進出を逃したベガルタ仙台。郷家友太をはじめ、主力選手の移籍もあった中、森山佳郎監督は今年で就任3年目を迎える。明治安田J2・J3百年構想リーグをチャレンジの場と捉え、既存戦力の底上げや戦術の引き出しを増やし、8月からのJ2リーグ開幕に備える構えだ。(取材・文:小林健志)[1/2ページ]
あと一歩のところでJ1昇格を逃し、主力の離脱も…
昨季、リーグ戦7位に終わり、J1昇格プレーオフ出場を逃したベガルタ仙台【写真:Getty Images】
昨季のベガルタ仙台はJ1昇格に向けて、非常に手堅い戦いはできていた。J2リーグでは連敗が一度も無く、失点も36とリーグで4番目に少ない数字だった。
全員がハードワークし、最後まで諦めずに戦えていたからこそ、第19節・モンテディオ山形戦や、第34節・サガン鳥栖戦のように、最終盤での劇的ゴールでの勝利もあった。手堅く粘り強く戦えたことで、最終盤までJ1昇格争いに絡むことができた。
しかしながら、改めてリーグ戦を振り返ると、結果的にJ1昇格を果たした水戸ホーリーホック、V・ファーレン長崎、ジェフユナイテッド千葉といった上位3チームには負けなしだったが、中位・下位との対戦で引き分けや負けが重なり勝ち切れず、勝点を取りこぼした。
シーズンを通して、概ね4-4-2のフォーメーションで戦ってきたが、3-4-3、3-5-2といった3バックのチームに対する相性の悪さも目立った。リーグ戦終盤はずっとプレーオフ圏内で一番下の順位である6位に何とか踏みとどまっていたが、最終節・いわきFCに0-1で敗れ、最後の最後で7位に後退し、J1昇格プレーオフ出場を逃す結果となった。
J1昇格争いに絡みながらも昇格できなかったチームは、当然主力選手がJ1クラブへ移籍していく。
昨季、キャプテンを務めたMF郷家友太はヴィッセル神戸へ。チーム一の古株だったDF真瀬拓海は水戸へ。そして、仙台大学から加入し、2シーズン左サイドバックのレギュラーを務めたDF石尾陸登が千葉へとそれぞれ移籍した。
そんな中、新たに加入してきた選手の中で、即戦力は岩手県一関市出身でファジアーノ岡山でプレーし、2024シーズンは13ゴールを挙げてJ1昇格の原動力となったMF岩渕弘人や、先述の最終節・いわき戦で、仙台を奈落の底に沈める決勝ゴールを決めたDF五十嵐聖己だ。
単純に当てはめると、攻撃的MFもFWもできる岩渕は郷家に代わる存在であり、攻撃的な右サイドバックとしていわきで大きく成長した五十嵐は真瀬に代わる存在と言える。
ただ、石尾の代役に当たる選手は獲得しておらず、得点力不足が目立った中で、チームを去ったFWエロンに代わる外国籍のストライカーはこのオフ獲得しなかった。
派手な動きが少なかったオフを終え、1月8日、仙台は始動し、スポンサーや自治体関係者などを集めた結団式と、新加入選手発表会を行った。その席上、就任3年目となった森山佳郎監督は明治安田J2・J3百年構想リーグへの意気込みと狙いを語った。
森山佳郎監督が「3年目のチャレンジ」で明言したこと

ファジアーノ岡山から今季、ベガルタ仙台に加入したMF岩渕弘人【写真:小林健志】
「僕も3年目のチャレンジになります。今年はシーズン移行ということで、8月開幕の昇降格のあるJ2リーグの前に百年構想リーグという2月から6月までのハーフシーズンがあります。
これには昇降格がありません。僕たちにとってはある意味新しいことにチャレンジする、あるいは選手の成長に特化する、チームの進化に特化できる期間をいただいたと思ってですね、ここはもう大きな変化、チャレンジと言うか、そういう機会にしたいなと思っています」
戦術的な新たなチャレンジと選手の成長を促す期間にしたいと語った森山監督。
戦術面では新加入選手発表会の質疑応答で「3バックを試すのか」という具体的な質問が飛んだ。
森山監督は「新しいことをチャレンジするには最高のシチュエーションだと思うので、そこはこれまでにやってないようなこともやっていきたいですし、入ったメンバーを見れば、そういうこともあるかなということもちょっと察していただければ…」と確実に3バックをやると明言はしなかったが、先述の岩渕や五十嵐は3バックのチームで活躍してきた選手である。
さらには、ブラウブリッツ秋田などで活躍してきたベテランのセンターバック、韓浩康を獲得し、左利きのDFマテウス・モラエスを残留させ、センターバックの層を厚くしていることも考えると、3バックにトライする可能性は高い。
「昨年やったシステムも決して悪いわけじゃなくて、上位陣に対して負けない戦いもできますので、まずはこのシステムを使って、よりいろんなことができると言うか、より戦術的に柔軟に対応できるように、チャレンジしていける期間をもらったなと思っています」
この言葉からもわかるように、さまざまなシステムにチャレンジし、昨シーズンの戦い方にプラスする形で、戦術的なオプションを増やしていきたい意向を示している。
選手起用についても、高卒・大卒1~3年目くらいの選手を積極的に使っていくプランを明かした。
ベガルタ仙台はもう一度、育成重視路線に立ち返れるか

就任3年目となるベガルタ仙台の森山佳郎監督【写真:小林健志】
「昨年の新卒の南(創太)とか、安野(匠)とか横山(颯大)。あとは(湯谷)杏吏の4人も、かなり試合に出せそうな感じに成長してくれているので、そういう選手を使ったりできると思いますし、ここにいる新卒の選手たちもそうです」
ただし、「プレゼントではないので、チャンスは転がってくるわけじゃないので、それを本気で掴みに来てほしい」と簡単に出場機会を与えるわけではないことも強調した。
「ここは旬でしょう、ピチピチしてるでしょうという選手はもう容易に試合に出しやすい時期でもあるので、この期間をしっかり利用して、チームの総合力を上げていきたいなと思っています」と試合出場に向けて積極的なアピールを見せている選手を、公式戦に出すことで選手層を厚くしていこうと意欲を見せた。
昨シーズンは昇格を目指して手堅く戦うことはできていたが、いつしか戦術の幅が狭まり、相手に研究されてしまうとそれを打破できない試合も少なくなかった。
また、昨シーズンの始動時は「武器のある選手の獲得」を掲げ、グループとして誰と誰が合うのかといったユニットを多くつくろうとしていた。それも前半戦はかなり成果として出たのだが、個人能力に依存する部分が多いこともあり、やはり相手の研究が進んでくる後半戦、終盤戦で閉塞感が見られた要因の一つであったと言えるだろう。
森山監督は就任当初育成重視を掲げて、クラブも若手選手を積極的に獲得していたが、ここ2年、J1昇格争いに絡み続けたこともあって、だんだんと思い切った若手選手の起用が減っていき、他クラブから即戦力選手を補強するようになり、せっかく高卒・大卒で獲得した若手選手になかなか出場機会を与えられずにいた。
結果的に終盤戦勝ち切れない試合が続き、最後の最後でプレーオフ出場を逃したわけだが、その要因の一つとしては若手選手を育てきれず、戦力化し切れなかったことも挙げられるだろう。
こうした昨シーズンの反省の下、この百年構想リーグは戦術の幅を広げることと、若手選手を育成し、チームの総合力を高める方向に舵を切ることとなった。