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「10番をつけたい気持ちはあるのか?」西野奨太に新たな目標ができた。北海道コンサドーレ札幌を21歳が引っ張る【コラム】

シリーズ:コラム text by 黒川広人 photo by Getty Images,Editor
北海道コンサドーレ札幌 西野奨太

北海道コンサドーレ札幌の西野奨太【写真:Getty Images】



 北海道コンサドーレ札幌のキャンプ序盤のプレーと振る舞いを見ていると、昨シーズンのJ2リーグ優秀選手賞にも選ばれた西野奨太の存在感が際立って映った。プレーと行動の1つ1つから、「今年は俺がコンサドーレを引っ張る」という強い気概が感じられる。そんな男が今、札幌で果たしたい、新たな目標が1つできたと明かしてくれた。(取材・文:黒川広人)

北海道コンサドーレ札幌のキャンプで際立つ西野奨太の存在感

北海道コンサドーレ札幌 西野奨太

今季、さらなる飛躍が期待される北海道コンサドーレ札幌の西野奨太【写真:編集部】

 ある日の練習を見て、正直驚いた。選手たちが口を揃えて「過去一でキツかった」と語る通り、65分間あまりの全体練習だったが、攻撃は出したら止まらない。守備は奪いに行く意識づけを徹底し、「プレーを絶対に止めない」という合言葉のもと、練習は高いテンポで進んでいく。

 強度の濃さと、全体からあふれる活気に、新シーズンへの期待の高まりを感じずにはいられなかった。

 その中でも、西野奨太の存在が際立っていた。

 あるハードな練習メニューで、コーチが当初、宣言していた本数より1本少ない状態で次のメニューに切り替えようとした瞬間、「あと1本あるよ!」と、西野が膝に手を当てるほど疲労した中でも叫んだ。



 すかさず「奨太、いいぞ!試されていたよ!」と小川佳純新コーチが笑顔で呼応した。新体制の活気あふれる船出に、西野も充実感を漂わせている。

「今までにない強度でできています。昨年1番足りなかった、根本の“走る・戦う”というところをメインに取り組んで1週間が経ちましたけど、ひとりひとりの意識の変化を感じています。

 昨年は(高嶺)朋樹くんについていく形でしたけど、今年は全員が高い基準で“走る・戦う”をやれている。良いキャンプの入りができていると思います」

 選手ひとりひとりが昨年の屈辱を晴らすべく盛り立てようとしているのはもちろんのこと、菊地直哉ヘッドコーチを中心に、昨年から在籍するコーチ陣、新たに加わったコーチ陣が一体となって、選手たちを鼓舞している。その姿勢こそが、活発な雰囲気づくりの原動力となっていた。

誰かに引っ張られるでのはなく、自分がチームを引っ張る存在に

北海道コンサドーレ札幌

昨季は高嶺朋樹(下段右から2番目)がキャプテンとしてチームを牽引した【写真:Getty Images】

「今年はスタッフのみなさんが、マーカーを1歩超えるとか、今まで少し妥協されていた部分を許さず、“オーバーするまでやり切る”という基準が、1つどころじゃなく2つ、3つと上がっている感覚があります。

 チームとして掲げているフィロソフィーに向かって取り組めているという充実感もすごくあります。(川井健太)監督も言っていますが、無意識に1歩が出るチームに、ここからなっていくんじゃないかと変化を感じています」

 昨年から大きく頭角を表した西野だが、高嶺朋樹という絶対的な存在に引っ張られる立場でもあった。

 だが、新シーズンは、西野自身がチームを引っ張る覚悟で臨んでいることがハッキリと伝わってくる。

 そして、周囲もまた、西野が前線に立つ存在になることを求めていると感じられ、複数の選手やスタッフから「奨太はもう引っ張る立場だ」といった声が聞かれた。

「自分自身、去年は試合に出て、チームの誰より悔しい思いをした感覚があるので。去年みたいに誰かに引っ張ってもらう立場で練習していたら、去年の悔しさが全部無駄になってしまう。



 個人の成長のためにも、自分がやる姿勢を全面に出して、見せないとダメだと思っています。今年は自分が先頭に立って、チームが目指す方向へ引っ張っていくつもりです」

 昨シーズン、飛躍を遂げ、J2リーグ優秀選手賞にも輝いた西野には、複数のJクラブがその去就に注目していた。

 しかし、西野は北海道コンサドーレ札幌で新シーズンも戦う意志を固めた。

「正直、まだコンサドーレで何も成し遂げていないと思っているので。コンサドーレをJ1に上げること。仮に先のことを考えるとしても、そこからだと思っています。まずはチームをJ1に上げる役割を、自分が牽引できるように成長していきます」

 そんな西野には、J1昇格とともに、札幌で成し遂げたい新たな目標が生まれた。

「最初は冗談だと思っていたんですけど」西野奨太が憧れの存在・宮澤裕樹からかけられた言葉

北海道コンサドーレ札幌 宮澤裕樹 西野奨太

北海道コンサドーレ札幌の宮澤裕樹(中央黄色ビブス)と西野奨太(右端)【写真:編集部】

 アカデミー時代から憧れの存在として名前を挙げてきた宮澤裕樹と、あるオフの日に過ごした時間の中で、こんな会話があったという。

「嬉しいことに裕樹さんから『西野、10番をつけたい気持ちはあるのか?』と聞かれたことがあって。『つけたいです』と答えたら、裕樹さんがニコッと笑ってくれて。最初は冗談だと思っていたんですけど、裕樹さんと一緒にご飯に行くと、そういう話題が頻繁に出るようになってきたんです。

 正直、10番という背番号そのものに強くこだわっているわけではありません。ただ、裕樹さんのコンサドーレへの想いと、コンサドーレの象徴である、その背番号を、誰かに譲りたくないという気持ちは強いので。

 自分がそういった存在になれて、裕樹さんが『譲りたい』と思うタイミングが来たときにしっかり背負える選手でありたい。裕樹さんの後を背負えるように頑張りたい。自分の新たな目標ができました」

 どんな未来が待っているかはわからない。



 それでも、西野が宮澤というバンディエラに憧れ、彼の札幌への想いを継承したいと思っているのは、今の本音だ。そのためにも、ピッチ内外で誰もが認める存在にならなければいけない。

「去年、クラブに関わる皆さんに悔しさともどかしさが残るようなシーズンを味わわせてしまったのは、出場していた自分の責任だと思っています。その悔しさや責任をまずはハーフシーズンからすべてぶつけていきます。

 そして、J1に値するチームをひとりひとりが高い意識を持って、全員で作り上げたいと思っています。サポーターの皆さん、応援よろしくお願いします」

 昨年の飛躍と悔しさを糧に、2026年、西野はクラブで突き抜けた存在になれるのか、注目の1年が始まる。

(取材・文:黒川広人)

【著者プロフィール:黒川広人】
北海道出身。大学卒業後、フジテレビで番組制作を担当。2018年よりDAZNにてJリーグ関連の番組制作に携わる。2022年からは株式会社dscに所属し、Jリーグ、Jクラブ、WEリーグをはじめとする各種スポーツ団体の映像ディレクション業務を担当。また、地元・北海道を中心に学生年代の取材活動も精力的に行う。

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【了】

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