明治安田J1百年構想リーグ・地域リーグラウンド第1節、FC東京対鹿島アントラーズが7日に味の素スタジアムで行われた試合は1-1で90分を終え、PK戦の結果、5-4でFC東京に軍配が上がった。昨季王者の初戦から見えた今季の鹿島の姿を、指揮官や選手たちの言葉からひも解く。(取材・文:加藤健一)[1/2ページ]
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退場者を出すも勝ち点1
雪が舞う味の素スタジアムで行われたFC東京との開幕戦。昨季J1王者・鹿島アントラーズにとって、その90分は結果以上に姿勢に価値がある試合だった。
序盤から鹿島は、後方から丁寧につなぎ、試合を掌握しようとした。素早い寄せとボール保持で主導権を握り、前半14分には荒木遼太郎がミドルシュートを放つなど、狙いは明確だった。
一方で、前線と最終ラインの距離が間延びし、ゴール前に迫る場面を多く作ることはできなかった。
その流れの中で起きたのが、41分の三竿健斗の退場だった。低い位置に降り、早川友基からパスを受けたところでミスから一発退場。さらに、与えた直接FKで先制点を許す。鹿島にとって、最悪の展開と言ってもよかった。
だが、チームは崩れなかった。
直後のCKからキム・テヒョンが右足でゴールネットを揺らし、すぐさま同点に追いつく。数的不利を背負いながらも、鹿島は逃げることなく立ち向かった。
鹿島は10人になってもボールを動かし続けた。無理に蹴り出すことも、ただ耐えることもしない。植田を中心に守備を締めながら、チャンスと見れば前に出ていく。エウベルのシュートがポストを叩いた場面は、その象徴だった。
PK戦の末に敗れ、結果は勝ち点1止まり。だが、そこまでネガティブな空気は漂っていない。
この試合で印象的だったのは、鬼木達監督が大きく動かなかったことだ。
「動く必要性がない」鹿島アントラーズが勝負に行くタイミング
三竿が退場になった直後は荒木遼太郎をボランチに回し、ハーフタイムに交代枠を使わなかった。63分に運動量が落ちてきたエウベルを下げ、77分には荒木と小川諒也を交代。88分に最後の交代回数を消費し、1枚の交代枠を残した。
昨季までの鬼木監督であれば、早めに手を打つ姿も珍しくなかった。しかしこの日は、交代もシステム変更も慎重だった。
「そんなに動く必要性がないと思いました」
試合後、鬼木監督はそう語った。
「自分も今までの1人退場になったときの戦いに凝り固まらないように、鹿島は鹿島の(戦い方がある)。ゲームの展開の中でそういうものを見極めながらやることが重要かなと思います」
耐えられる時間が思った以上に長かったこと。選手たちがリズムを失っていなかったこと。相手の出方を見ながら、ゲームの流れの中で判断できると感じていたこと。
「勝負に行くタイミングがやっぱりあるので、色んなシステムを含め、そういう準備はしていました。あくまで、それはゲームの状況で(判断する)ということ」
選手たちの動きをつぶさに観察しながら、あえて動かないという判断を下した。
「10人になったからといって、ボールをクリアするだけで終わるのはやめようと話しました。逆に動かせば、相手の焦りも引き出せる」
ここに、鬼木体制2年目の鹿島が目指す姿がある。
「危ないシーンがあったからじゃなく…」
スタイルを簡単には変えない。ミスを恐れて、選択肢を狭めない。鹿島は鹿島らしく戦う。
後半にも退場シーンの再現とも言えるような場面があった。70分、早川友基からパスを受けた荒木がボールを失い、長倉幹樹が左足でゴールを狙う。植田直通がゴールラインギリギリでクリアして事なきを得たが、失点していてもおかしくないシーンだった。
荒木はこう振り返る。
「危ないシーンもありましたけど、でもあそこビビらずにやることで、チームが前進していける。危ないシーンあったから(ボールを)受けないじゃなくて、それをプラスに捉えればいいと思うし、失点しなかったから続ければいい。そこは、ミスしたからってにビビらずに行ってました」
また、荒木は焦らず積み上げる重要性を口にした。
「下でしっかり繋ぎながら、ゆっくり前線に進んでいく。そこで手こずっている部分はあるけど、焦らなければもっとゴールに向かえた」
完成度はまだ高くない。だが、そこでブレてしまうと完成度は上がらない。
開幕前に、鬼木監督はこう語っている。



