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J1 8時間前

「もっと恐い選手に」工藤孝太はファジアーノ岡山で背伸びをしながら、もがきながら。背番号2を託した立田悠悟の言葉【コラム】

シリーズ:コラム text by 難波拓未 photo by Getty Images
ファジアーノ岡山DF工藤孝太
ファジアーノ岡山DF工藤孝太【写真:Getty Images】



 8日に行われた明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンド第1節、アビスパ福岡対ファジアーノ岡山は、1-1で90分を終え、PK戦を福岡が制した。昨季リーグ戦25試合に出場した工藤孝太は、岡山の3バックの一角に入った。相手から恐れられるようなDFになるために。工藤は闘志あふれるプレーで岡山を支える。(取材・文:難波拓未)[1/2ページ]
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粉雪の舞うピッチで赤髪が躍動する

ファジアーノ岡山の工藤孝太
ファジアーノ岡山DF工藤孝太【写真:Getty Images】

 気合いが、闘志が、みなぎっていた。

 ファジアーノ岡山はアウェイに乗り込み、アビスパ福岡と対戦した。J1初挑戦の2025シーズンが終了してから64日後。例年よりも早い開幕ではあったが、約440km先のベスト電器スタジアムに駆けつけた1500人以上のファン・サポーターは、キックオフ前からチャントの大合唱で高揚感を寒空に解き放つ。タオルマフラーやゲートフラッグでアウェイのゴール裏席をファジレッド一色に染め上げ、J1定着を目指して戦う新シーズンの到来に心を躍らせていた。

 キックオフを告げるホイッスルが鳴り響くと、両チームは前線に向かって躊躇なくロングボールを放り込む。リスクを回避した選択ではありながらも、相手ゴールに向かう気迫が溢れていた。


 岡山が粉雪の舞うピッチに火を付けたのは、キックオフから4分14秒が経過した時だった。福岡陣内でセカンドボール争いが連続すると、FW名古新太郎が前線に蹴り出す。このボールに対して素早く落下地点に入ったFW碓井聖生が収めようとした瞬間、背後から白色のシャツを着た選手が高く跳び、頭で力強く跳ね返した。

 浦和レッズからの育成型期限付き移籍を延長したDF工藤孝太である。滞空時間の長いヘディングで起点を作らせないどころか、自分よりも身長の高い碓井を吹き飛ばしてみせた。

「なぜか赤に染めたくなった。ファジアーノのチームカラーも赤だし、“ファジレッド”ということで」と赤髪で臨んだ2026シーズン最初の競り合いに、今シーズンに懸ける思いが詰まっていた。

「恐さを与えるために」

「最初のプレーは意識していましたし、恐さを与えるためにもガツンと。言い方は悪いですけど、削るぐらいの勢いで激しく行かないといけないし、相手との駆け引きも含めて、(相手から)もっと恐い(と思われる)選手になっていきたい。今日の試合は、僕自身しっかりと入ることができた。その点に関しては良かったと思います」

 プレーのほとんどがリアクションをメインとするDFにとって、ファーストプレーで勝利できるかどうかは非常に大事なこと。勝つことで、相手に躊躇させたり自らの狙いとする形に誘導したり、1試合を通して何度もマッチアップする相手に対して主導権を握る上で欠かせないと言える。だからこそ、集中力を研ぎ澄ませて、力を解放させた。

 目の前の相手に仕事をさせないために先手を打つという意図がありながらも、工藤自身にも特別なエネルギーがあった。2024年以来でプロキャリア2度目となる開幕スタメンを勝ち取ることができたのだ。試合直前の公開練習の際には、強い思いを話してくれていた。

「開幕戦にスタメンで出るのは、サッカー人生の中でJ3の北九州での1回しかないので。J1での開幕スタメンは意識しています。キャンプなどの開幕までの期間で、どれだけ自分がアピールできたか。このチームでの立ち位置は、どういうものなのか。それらが開幕スタメンには分かりやすく出ると思う。勝つためには、こだわりすぎるのは良くないですけど、やっぱり出たい」


 その後も工藤は全ての競り合いと球際を激しく戦った。7分にはサイドから自陣ペナルティーエリア手前への縦パスをインターセプト。FW重見柾斗をなぎ倒し、ボールを強奪した。

 16分には後ろに下がりながらクリアし、そのルーズボールにも再び頭を突き出す。碓井との接触に恐れることなく跳ね返し、ファウルを受けてFKを獲得。これには3バックの中央でプレーしたDF立田悠悟も歩み寄りタッチをかわして健闘を讃えた。

 クロス対応も完璧と言える出来だった。リードして迎えた後半は、攻勢を強めた福岡が岡山の右サイドから数多くのクロスを放り込んできた。そのボールは鋭く、191cmの立田を越えてDFラインとGKの間や、岡山の選手たちが右サイドにスライドして空いた自陣PA左のスペースに飛んでくる。

 55分にはセットプレーの流れからMF前嶋洋太からのクロスがファーサイドでフリーになっていたMF見木友哉に向かってくる。しかし、工藤が周囲の状況を確認し、細かいステップから跳躍力を活かしたヘディングでPA外にクリアした。

 見木の近くにはMF江坂任が戻っていたが、2人の位置関係は見木が内側で江坂が外側だったため、工藤が触っていなければフリーでゴール至近距離からのヘディングシュートを許していただろう。失点も覚悟するピンチを防いだ。

「そこは絶対に負けない」工藤孝太の手応え

ファジアーノ岡山DF工藤孝太
ファジアーノ岡山DF工藤孝太【写真:Getty Images】

「クロス対応は自信があるし、(得意としている)空中戦の一部でもあると思うので、そこは絶対に負けないというところで。このチームの3バックは簡単に競り合いで負けていたら話にならない。なので、そこでチームに安心感を与えながら。

 ある程度の守備の仕組みはチームとしてできているので、自分がしっかりポジショニングを取っていれば、ボールが自分たちに向かってくるような仕組みはできている。クロス対応は、チームが中を締めながら外に追い出して守備をしていく中でもこれからの試合でも多くなってくると思う。


 そういうところでは本当に今日みたいに自分が弾くことだったり、そもそもクロスを上げさせないコーチングだったりが本当に大事になってくる。まずは今日クロス対応のところで失点しなかったのは本当に良かったと思います」と、手応えを感じている。

 隣でプレーした立田は、開幕戦の1試合の中で工藤の昨シーズンからの成長を感じているようだ。

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