
北海道コンサドーレ札幌の木戸柊摩【写真:Getty Images】
北海道コンサドーレ札幌の木戸柊摩に、大卒2年目の飛躍を予感させる空気が漂っている。昨季はリーグ戦22試合に出場し、一定の成果を残した。だが、札幌アカデミー時代から幾度も取材してきた筆者としては、「まだこんなものではない」と感じた1年でもあった。木戸は今季、チームを象徴する存在へ駆け上がれるのか。分岐点となる1年が始まった。(取材・文:黒川広人)
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「ボランチの1番手になりそう」。木戸柊摩がAC長野パルセイロ戦でみせた持ち味
明治安田J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンド第3節・AC長野パルセイロ戦でボランチとしてフル出場した北海道コンサドーレ札幌の木戸柊摩。
長短の配球、アジリティを活かした持ち運び、そして、球際でのボール奪取。持ち味がはっきりと示された一戦だった。
「僕や西野(奨太)がこのクラブを引っ張っていかないといけない自覚は強くあります」
今季に入り、顔を合わせるたびにこうした言葉を口にするようになった。キャンプの段階から、その変化の兆しは感じていた。
元来の技術と俊敏性に加え、フィジカルもプロ仕様へと進化。率直に「ボランチの1番手になりそう」と思わせる内容だった。
意識や行動の変化は、表情にも表れる。
2月某日、大阪体育大学の松尾元太監督と顔を合わせた際、開口一番にこう言われた。
「(木戸)柊摩よくなってきたね。顔つきが変わってきた」
思わず「そうですよね」と返した。
今季、木戸は背番号18を背負う。
後に日の丸を背負った吉原宏太氏や山瀬功治氏、そして、チャナティップらが身に着けた、クラブにとって特別な番号だ。その18番を木戸は自ら志願した。
同じ下部組織出身で昨季、現役を引退した深井一希に憧れる男が、その理由を語る。
「8って言われたらどうしようかと思ってた(笑)」

昨季はリーグ戦22試合に出場し、一定の成果を残した北海道コンサドーレ札幌の木戸柊摩【写真:Getty Images】
「一希くんの8番をつけたい思いはあります。でも、昨年のプレーで8を背負うのはまだ早いとも思っています。18は一希くんが8をつける前の番号でもありますし、コンサドーレにとって大事な番号。
そこに自分から希望を出しました。コンサドーレを自分が引っ張っていくという覚悟の意味の背番号18です」
クラブに希望を伝えた際には、「8って言われたらどうしようかと思ってた(笑)」と返されたという。
誰もが認める存在になったとき、“背番号8・木戸柊摩”は自然と誕生しているはずだ。
だが、その存在になるにはまだまだ成長も必要だ。長野戦はストロングが際立った一方で、課題も浮き彫りになった。
失点場面では、相手GKのフィードに対し、木戸の背後を使われ、失点につながった。
77分には、相手陣内で潰しに行くも入れ替わられ、カウンターから大ピンチを招く場面もあった。
「失点場面は後ろが2対1になっている状況を把握しきれていませんでした。あそこは自分が下がるべきだったと思います。入れ替わりも、自分のところで潰し切らないといけない。ここから上に行くには、あそこで止められるボランチにならないとダメです。いくら良いプレーをしても、失点につながれば意味がないので」
木戸自身、自身の課題への自己分析は明確だ。
「課題はポジショニングだと思います。ボールを持ったときの良さや1対1の局面で奪い切る点は成長を感じています。でも、試合を通しての立ち位置や、無駄走りなどまだ改善点は多いです。(宮澤)裕樹さんのような、良いお手本がいるので、うまく吸収していきたいと思います」
木戸を積極的に起用する川井健太監督も期待を寄せながら、さらなる成長を促す。
木戸柊摩は「基準を高く求めていい選手」

今季はリーグ戦初のフル出場を果たし、3戦連続でスタメンに名を連ねている北海道コンサドーレ札幌の木戸柊摩【写真:Getty Images】
「良いものを持っていると思います。ただ、まだまだな部分もある。まずは、自分自身を知ること。もっともっとできますし、本当に今、どっちに転ぶかという感覚の選手です。ただ、もう一つ、ここで行ければ、素晴らしい選手になると思っています」
この言葉を聞いたとき、松尾監督がかつて語った言葉が重なった。
「柊摩は、基準を高く求めていい選手」
求められれば応えられる力がある。そして、木戸自身も、その期待を真正面から受け止めている。
「川井さんから『ここでグッと上がるタイミングだぞ』と言ってもらい、今チャンスをもらっています。強みを出して、チームを勝たせたい。2年目は本当に大事な年だと思っています。まずは全試合に出ること。1試合1試合、手応えは掴めてきていますし、チームを勝たせられる選手にここからなります」
今シーズン、自身初のリーグ戦フル出場を果たし、チームも初勝利を挙げた。次に狙うのはリーグ初ゴールだ。
無回転、カーブ、ストレートと多彩なキックを操る木戸。長野戦でも無回転ミドルでゴールを脅かした。今季の公式球はブレやすく、その特性とも好相性だ。
「あのミドルは自分としては、もう一個上から落とすイメージだったんですが、練習でもブレ球の手応えはありますし、狙える場面では狙っていきます。そろそろ本当にいきますよ!」
そう言って、木戸がニヤリと笑った。
ホーム開幕戦、大和ハウス プレミストドーム。スタンドをどよめかせる一撃を、虎視眈々と狙っている。
今まさに、飛躍のタイミングを迎えつつある木戸。その一挙手一投足から、目が離せない。
(取材・文:黒川広人)
【著者プロフィール:黒川広人】
北海道出身。大学卒業後、フジテレビで番組制作を担当。2018年よりDAZNにてJリーグ関連の番組制作に携わる。2022年からは株式会社dscに所属し、Jリーグ、Jクラブ、WEリーグをはじめとする各種スポーツ団体の映像ディレクション業務を担当。また、地元・北海道を中心に学生年代の取材活動も精力的に行う。
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