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J1 14時間前

「やっぱりいいや」ジェフ千葉、髙橋壱晟が恩師のもとへ向かわなかった理由。「そんな気分じゃなかった」再会よりも残った悔しさ【コラム】

シリーズ:コラム text by 菊地正典 photo by Getty Images

ジェフユナイテッド千葉、髙橋壱晟
ジェフユナイテッド千葉の髙橋壱晟【写真:Getty Images】



 明治安田J1百年構想リーグEAST第4節が27日に行われ、ジェフユナイテッド千葉はFC町田ゼルビアに2-1で敗れた。試合後、恩師のもとへ向かうはずだった髙橋壱晟の足は止まった。J1の舞台で突きつけられた力の差。積み重ねてきた時間と覚悟を胸に、次の成長へと視線を向けている。(取材・文:菊地正典)[1/2ページ]
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「そんな気分じゃなかった」

ジェフユナイテッド千葉、髙橋壱晟

ジェフユナイテッド千葉の髙橋壱晟【写真:Getty Images】

 試合が終わってピッチに立つ相手や審判団とのあいさつ、ベンチのチームメートやスタッフたちとのハイタッチを済ませると、髙橋壱晟はチームメートと共にジェフユナイテッド千葉のファン・サポーターが集うゴール裏へ向かった。

 特別なことではない。ただ、反対側のベンチに黒田剛監督がいることを考えれば、意外な行動だった。

 FC町田ゼルビアを率いる黒田監督は、髙橋にとって10番として青森県勢初の全国高校サッカー選手権優勝を果たした青森山田高校時代の恩師というだけでなく、小学2年生から青森山田高校卒業までチームメートだった幼馴染の父である。

 関係の深い対戦相手と再会を喜ぶことは、試合後のピッチでよく見られる光景だ。髙橋と黒田監督もそうであるものだと思われた。



 しかし、髙橋は黒田監督のもとには行かなかった。

「『やっぱりいいや』と思って。もちろん行こうという気持ちもありましたけど、そんな気分じゃなかったんです」

 試合前にはプロとして初めて対戦すること、成長した姿を見せることを楽しみにしていた。それなのに――。

「ここまでの対戦相手より…」

ジェフユナイテッド千葉、髙橋壱晟
ジェフユナイテッド千葉の髙橋壱晟【写真:Getty Images】

「とにかく悔しさが大きかったんです」

 クラブとして17年ぶり、自身初のJ1の舞台にたどり着き、4試合を戦い終えた。第3節の相手は昨季までJ2でも対戦していた水戸ホーリーホックだったが、第1節では浦和レッズ、第2節では川崎フロンターレとJ1でもトップを狙うチームと対戦してきた。

 それでも、町田は最も苦労させられた相手だった。1-2というスコア以上の差を感じた。

「J1に慣れてはきたと思いますけど、もっと上がいたなと感じます。ここまでの対戦相手よりさらに質が上がった相手だったと。質も強度も高かったですね」

 特に右サイドバックの髙橋が力の差を痛感したのは、対峙する機会が多かった相手の左シャドー、相馬勇紀だった。



「完敗だったんじゃないですかね、今日は。止められなかった」

 試合前、千葉の小林慶行監督が町田の特長として挙げていた「日本代表のラージグループに入っている選手」の筆頭であり、6月から行われるワールドカップのメンバー入りにアピールするかのように好調を維持している相馬は、千葉にとって脅威であり続けた。

 加えて、外から見ていると止められないこと以上に印象的だったのは、攻撃的MFとしてプレーしていた高校時代からは変貌するようにハードな守備を武器とするはずの髙橋が、マークにつけない、1対1にすら持ち込めない状況が多かったことである。

 その理由に髙橋は町田の強さを感じていた。

「僕らが今までやったことがないような相手」

ジェフユナイテッド千葉の髙橋壱晟
ジェフユナイテッド千葉の髙橋壱晟【写真:Getty Images】

「全部奪いに行くつもりでプレーしていましたが、そんなに簡単にできないシチュエーションを作られてしまいました」

 4-4-2で守る千葉は、流動的ながら3-4-2-1で攻める町田にギャップを突かれた。コンパクトにしているつもりでも、どこかのスペースに誰かが立っている。その選手に対し、谷晃生や昌子源から中長距離の良質なフィードが送られた。

 その対応で後手に回り、千葉はチーム全体が振り回される。髙橋も、気づけば守備範囲内に相馬がいない状況を作られ続けた。

「彼らのフィードと前線やサイドの選手の高さによって、僕らがどうコンパクトにしても逃げられる。能力の高さを見せつけられました。コンパクトさやプレスを空中で逃げられるのは、僕らが今までやったことがないような相手でした」



 ミックスゾーンで取材を受けていると、黒田監督や青森山田高校の大先輩であり、青森山田中学時代の監督だった町田の上田大貴アシスタントコーチがあいさつに訪れた。

 その瞬間には頬を緩ませていたものの、試合について語る髙橋の表情は常に硬かった。

 だが、落胆などはしていない。

「悔しい」と何度も口にし、唇を噛んだとき、報道陣から「それでも気持ちは…」と向けられると、言葉を遮るように返した。

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