ベガルタ仙台の杉山耀建【写真:Getty Images】
明治安田J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドEAST-Aで首位を走るベガルタ仙台。ここまで4試合全てで先発出場しているのは中央大学から加入したMF杉山耀建。相手を剥がすドリブルを武器にウイングバックもシャドー(インサイドハーフ)もこなし、第3節・栃木SC戦では決勝点となる逆転ゴールも決めた。森山佳郎監督も杉山の吸収力の高さに驚きの声を挙げる。(取材・文:小林健志)[1/2ページ]
「あれ?やれるじゃん」森山佳郎監督が評価する杉山耀建とは
ベガルタ仙台の新加入選手記者会見に登壇した杉山耀建(前列一番左)【写真:小林健志】
「新しいことにチャレンジする、あるいは、選手の成長に特化する、チームの進化に特化できる期間をいただいたと思って、大きな変化、チャレンジの機会にしたい」と1月のチーム始動時に語っていたベガルタ仙台の森山佳郎監督。
その言葉通り、仙台は明治安田J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドで新しいチャレンジを見せている。
まずは、昨季まで4-4-2でほぼ固定だった基本フォーメーションを変更し、中盤にアンカーを置く形の3-5-2とした。
そして、若手選手を積極起用している。
開幕戦の栃木シティ戦でゴールを挙げたFW古屋歩夢や、第3節・栃木SC戦で途中出場し、第4節・ヴァンラーレ八戸戦で初の先発出場を果たした高卒2年目MF南創太など、若手選手が次々と起用され、実戦経験を積んでいる。
そんな若手選手の1人でここまで全試合に先発出場しているのが、MF杉山耀建だ。
中央大学から加入したばかりの杉山は、まず右ウイングバックとして出場し、テクニカルなドリブルによる仕掛けで爪痕を残した。
そして、栃木SC戦では試合途中からシャドー(インサイドハーフ)にポジションを移したところ、左サイドでロングフィードを受けると、ペナルティエリアでカットインして、そのままゴールを決めた。
「本当にマサ君(菅田真啓)から良いボールが来て、自分の得意な形で決められたので良かったです」と杉山は自身のプロ初ゴールを振り返った。
森山監督も「ポジションが変わってから決定的な勝負を決めるゴールも決めましたし、自分で局面を打開できて、判断を変えたりできるので、試合ごとに良くなってきている印象はありますね」と様々なポジションをこなせて、どのポジションでも自身の持ち味であるドリブルを活かしながら、決定機をつくり出すことができる杉山を大きく評価していた。
「キャンプの最初のうちはメンバーを変えながら練習試合をやっていって、少しずつメンバーを固めていったんですけど、その中で杉山を入れたら、『あれ?やれるじゃん』となって。そして、次の試合も出したら『あれ?やれるじゃん』という感じでした。
スタートで開幕戦というイメージは最初全くなかったのですが、試合を重ねていくうちに少しずつ序列を上げてきて、最後の練習試合でこれをやったら開幕スタメンで出さないとダメかなというような仕事をした。
開幕戦で使ってみたら、これは2戦目も使わないとダメかな、2戦目で使ったら3戦目も使わないとなと思ったら、ゴールを決めちゃって。ちゃんと自分でチャンスをつかんで可能性を広げていっているのかなと思います」
キャンプ中の練習試合からアピールを続けた結果、森山監督の信頼を勝ち取り、開幕から4戦連続先発出場となった。
杉山は、高校・大学時代にメディアやサッカーファンから注目の存在だったわけではない。
無名の存在からプロへ…自らを杉山耀建と重ね合わせる指揮官
ベガルタ仙台の森山佳郎監督【写真:Getty Images】
出身校である埼玉県の狭山ヶ丘高は古くは(当時の)コンサドーレ札幌や川崎フロンターレで活躍した黄川田賢司氏や、RB大宮アルディージャからJFL横河武蔵野FCに期限付き移籍中のGK若林学歩の出身校で、杉山は狭山ヶ丘高出身3人目のプロ選手となるが、全国大会出場の経験は無い。
中央大に進学したが、最初は一番下のカテゴリーのチームからスタートするなど、かなり苦労してプロへの切符を勝ち取った選手だ。
こうした境遇から現在の地位を勝ち取った杉山について森山監督は「雑草みたいですが、自分もそんな感じだったので、自分と似ているなと思って、わかるよ~って感じです」と自らの高校・大学時代と重ね合わせていた。
「自分も高校が全く無名で、県から全国大会に上がることもなかったですし、大学も一浪で入って、4年生になるまではBチームにいて、4年生からAチームに上がって何試合か出たら、広島(加入当時はサンフレッチェ広島の前身マツダサッカークラブ)から誘われたみたいな感じです」
森山監督の出身校・熊本二高はサッカーの強豪校ではなく、1年浪人して筑波大学に入ったものの、4年生でようやくAチームに上がってプロへの切符を勝ち取ったという、ある意味、杉山以上に苦しんでプロになった経験を持っている。
「うち(仙台)からしか誘われてないと思うのですが、練習に呼んでみたら、まあまあやるんじゃないかなというところはありました。開幕からいけるぞという期待は全然していなかったんですけど、まさかまさかでね。
成長力があって、下積みと言うか、辛い思いをしていても、自分でその苦しい状況を何とか打開して、自分の可能性をちょっとずつ広げてきた選手なので、その繰り返しができる選手なのかな」
加えて、杉山が先入観なく要求したことをこなせる部分についても評価している。
杉山耀建は「ちゃんと学んで次に活かすことができる選手」
ここまで4試合全てで先発出場しているベガルタ仙台の杉山耀建【写真:Getty Images】
「みんながそういうわけじゃないですけど、自分の経験則で自分の価値観も固まってくるので、自分というフィルターが分厚くなってきます。言われたことをやってみるとか、とりあえず自分の中で納得してやるとかができずに、フィルターを通さなくなってきちゃったり、自分はこう思うんだけどみたいなところが強いと頭が硬くなってきます。
杉山は高いレベルを経験していないこともあって、新しい、自分が経験していないレベルのところでもがきながら、あるいは吸収しながら、耳を傾けながら、謙虚にやれてきていることが彼の成長につながっています」
実際キャンプ中、最初はシャドーで起用したものの、ケガ人が多かったことからウイングバックで起用する形となり、「最初、守備がダメだったんですけど、ここは戻らなきゃとか、ここはこういうポジションを取らなきゃというところを少し授けたら、ちゃんとやれるようになって、吸収力と言うか、ちゃんと学んで次に活かすことができる選手」と吸収力の高さが起用につながったという。
杉山自身も開幕戦で自身のサイドで崩されて失点したことを問われると「そこから自分でも本当にちゃんと修正しなきゃなと思えたので、勉強になったかなと思います」と語り、2戦目以降は守備面も改善してきている。
試合で出た課題を克服しようと努力を重ねたことで、存在感は日増しに大きくなっている。
2月28日の八戸戦。森山監督は事前から、昨季J3最少失点の八戸の強固な守備を警戒していた。
「かなり守備の強度と粘り強さがあるチームだなというところです。試合を見ていても前節も湘南(ベルマーレ)に対してシュート10本差以上多く打っていますし、かなり湘南が苦しんでたなと思います」と守備力の高さと、激しい守備からカウンターで決定機まで持って行く攻撃に対して、大きく警戒して臨んだ試合だった。
杉山はウイングバックではなく、前節途中から左シャドーに入ってゴールを決めたこともあって、シャドーで先発出場した。
八戸と仙台は同じ3-5-2フォーメーションでミラーゲームとなったが、ミラーゲームの場合、特にオールコートマンツーマンのような形で守備をしてくる八戸に対しては、相手選手を1人、2人と剥がすことで数的優位な状況をつくり出すことができる。
杉山はマークに付こうとする選手を自慢の剥がすドリブルで、鮮やかにかわして優位な状況をつくり出した。「マンツーだったので、自分のところで1枚剥がせばチャンスになりますから、そういった場面は作れました」と相手を剥がすことができたことには手応えを感じていた。