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「もっとやらなければいけない」横浜F・マリノス、遠野大弥が“素敵な一日”で首を傾げた理由。「2点をリードするまでは…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 菊地正典 photo by Getty Images,Editor

横浜F・マリノス、遠野大弥
横浜F・マリノスの遠野大弥【写真:Getty Images】



 明治安田J1百年構想リーグ第6節が14日に行われ、横浜F・マリノスはジェフユナイテッド千葉に2-0で勝利し、今季2勝目を挙げた。誕生日に先制点を決め、チームの勝利に貢献した遠野大弥。本人にとって完璧な一日だったと言えるかもしれない。だが、試合後に見せたのは満足とは程遠い表情だった。長期離脱から復帰してまだ間もない中で決めたゴールの裏で、遠野は自分自身のプレーに何を感じていたのか。(取材・文:菊地正典)[1/2ページ]
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「素敵な一日になってよかった」

遠野大弥 横浜F・マリノス

横浜F・マリノスの遠野大弥【写真:Getty Images】

 遠野大弥は上機嫌だった。3月14日に行われたジェフユナイテッド千葉戦で先制点を決め、2-0での勝利に貢献したのだから、それも当然だろう。

 加えて、この試合は遠野にとって10年目のキャリアで初めて、誕生日当日に戦った公式戦だった。そんな試合でチームを勝利に導く先制点を決めたのだから、機嫌がよくない方がおかしい。

「素敵な一日になってよかったです」

 試合終了直後、サポーターの前でそう話していた遠野は、取材エリアでもよく笑った。

 見事なゴールだった。相手がクリアし、上から降ってくるようなボールを利き足ではない左足で合わせた。



「利き足じゃない方が思い切り振れるというか、外しても利き足じゃないからいいでしょ」

 そう言って笑いながら、遠野は続ける。

「それくらいの気持ちでリラックスして蹴ることができました」

 前々節の東京ヴェルディ戦の再現のようなゴール。ヴェルディ戦はジョルディ・クルークスのコーナーキック(CK)、今回は相手がクリアしたボールと違いはあるが、いずれも上から降ってくるようなボールだった。

 ペナルティーエリアの外だったことも含め、点で合わせなければゴールを決めるのは難しい。
 
 それでも、横浜F・マリノス加入以前にもボレーシュートで数々のゴールを決めてきた遠野は、相手がクリアしたボールを見た瞬間に確信する。

「先週は本当に不甲斐ない戦いを…」

横浜F・マリノス、遠野大弥
ゴールを決めて喜ぶ横浜F・マリノスの遠野大弥【写真:Getty Images】

「インパクトしただけで枠に飛べばいいシュートになる」

 イメージどおりに足がボールに当たる。結果として相手の頭に当たって方向が変わったが、イメージどおり枠に飛ばせていた。

 ゴールを決めるとチームメートを先導しながらゴール裏へ向かって走り、ユニフォームの左胸のエンブレムに口づけした。

 ヴェルディ戦で肩が外れたガッツポーズに関しては「控えめにしておきました」と笑いつつ、遠野はゴール裏に向かった心境をこう語った。

「先週は本当に不甲斐ない戦いをしてしまったので、何が何でも勝つという気持ちが生んだ行動だったと思います。技術は二の次で、闘う気持ちがあればこういう試合ができる」



 遠野の闘う気持ちは得点を決める以前、前半から感じられた。

 相手の間にもぐってくぐり抜けるだけではなく、相手に体を当てられても屈しない。とにかく前を向き、ゴールに向かい続ける。

 特に前半は両チームともにミスが目立つ展開になったが、その中で遠野のゴールに向かう姿勢は際立っていた。

 千葉は昨季までJ2で戦っていたとはいえ、強度を大事にし続けるチームである。特に中盤にはセカンドボールの回収も含め、プレー強度が強く求められている。

 そんな相手にも屈しない。もしかすると、離脱期間に意識的にフィジカルを鍛えたのか?

 そう問われると、どこに行ってもチームを盛り上げる明るいキャラクターの遠野は、声を出して笑った。

「それを強く意識したわけでは…」

宮崎キャンプ中の横浜F・マリノス 遠野大弥
宮崎キャンプ中の遠野大弥【写真:編集部】

「そう見えました? いや、離脱期間中も体を鍛えることはやめませんでしたけど、それを強く意識したわけではないです」

 ただ、対峙する相手と自身のプレーについては特別な意識があった。

「どういう相手なのか、それは意識しています。とにかく前を向くことを前提としているので。今日は強く奪いに来ることは予想していましたけど、そこは個人の問題になりますし、相手が来ても関係なく前を向こうと思っていました」

 前半から姿勢とプレーでチームの攻撃をけん引し、試合の流れを大きく引き寄せる先制点を決めた。チームはさらにゴールを重ね、2点をリードした89分に遠野はピッチから退いた。

 自身初のバースデーゲームでゴールを奪った。サッカーで2点差は危ないとよく言われるが、その時間帯ならよほどのことがないかぎり勝利は堅い。マリノスのファン・サポーターから万雷の拍手が送られた。



 それなのに、遠野は不機嫌だった。

 その瞬間に見せた様子は、試合後や取材エリアでの様子とは対照的だった。

 ピッチに残るチームメイトと健闘を称え合い、残りの戦いを託したときこそ笑顔だったものの、振り返ればすぐに表情を戻し、首を傾げながらピッチをあとにした。

 そのことに話が及ぶと、遠野は交代時と同じように、表情からふっと笑顔を消した。それまでの上機嫌ぶりが嘘のように、首を傾げた。

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