フットボールチャンネル

コラム 8時間前

シャドーの適任者は誰か? サッカー日本代表、完封勝利に貢献した選手交代と質的変化。優位は後半のコンビ【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by 田中伸弥
伊東純也 日本代表
決勝点をあげる伊東純也【写真:田中伸弥】



 サッカー日本代表は現地時間28日、国際親善試合でスコットランド代表と対戦し、1-0で勝利をおさめた。31日のイングランド代表戦に先がけ、今回の欧州遠征をポジションな形でスタートさせた。完封勝利に貢献したのは、選手交代による質的変化だった。(文:西部謙司)
——————————

後半の最大火力で競り勝つ

サッカー日本代表 スコットランド
スコットランド代表に挑むサッカー日本代表【写真:田中伸弥】

 伊東純也の84分のゴールで1-0。後半の選手交代で攻撃のギアが上がった日本代表がスコットランド代表を下した。

 前半はほぼ一進一退。ハイプレス、ビルドアップの両面でやや日本が上回っていたが明確な優位性は生み出せていない。

 後半も同じ流れだったが63分に4人を交代、ハーフタイムの3人と合わせて7人が入れ替わり、ここから攻撃の鋭さが増した。

 上田綺世がトップに入ってターゲットマンとして圧倒的なプレーを見せて攻め込みの起点となる。

 三笘薫、堂安律のシャドーにウイングバックの中村敬斗、伊東純也が連係する最大火力となり敵陣でのクオリティが上がっていた。



 67、69分と2つの決定機を作る。

 78分にはさらに3人交代。これでGK鈴木彩艶を除くフィールドプレーヤー全員が入れ替わった。

塩貝健人と上田の2トップとなり、ボランチは鎌田大地だけ。0-0の状況で使うには攻撃的すぎるシステムだが、どうしても得点がほしい場合のテストだろう。

 これまでの最大火力のさらに上をいく布陣は決勝点を生み出した。

プレスの変化と半自動的なビルドアップ

サッカー日本代表 佐野航大
前半に決定機を作った佐野航大【写真:田中伸弥】

84分、右サイドから中央左の中村を経由して左に開いた三笘へ。その間、三笘の内側を追い越した鈴木淳之介がペナルティエリア左へ侵入。三笘からのパスを受けてゴール前へ低いクロスを差し込み、塩貝がフリックして伊東が先制点を奪った。

 シュートモーションでかわしてから打った伊東の落ち着きもさることながら、流れるような崩しだった。

 4バックのスコットランドに対して、日本は1トップの後藤啓介が相手のアンカーをマーク、2シャドーの鈴木唯人、佐野航大がCBへプレスする。

 4年前のカタールW杯の時も1トップが相手アンカーへのパスコースを消すカバーシャドウだったが、2シャドーの相手CBへのプレスは限定的だった。

 現在は2シャドーがより前進することで、以前は相手のプレス回避場所になっていたCBを消している。

 日本のハイプレスに対して、スコットランドは右サイドハーフのジョン・マッギンがボランチの位置へ引いて経由点となる、日本のウイングバックを引き込んでからその背後にロングボールを落としてサイドへCFが流れてキープする。



 主にこの2つの打開を狙い、初手は上手くいったがすぐに日本は対処していた。

 ただ、スコットランドは粘り強くつないで何度か日本陣内へ前進する。

 一方、日本のビルドアップに停滞はなく、ほぼ自動的に敵陣深くまでボールを運べていた。

 しかし、アタッキング・サードでの崩しにはなかなかつながらず、38分の鈴木→佐野航大でのボックス内侵入から田中碧のシュートがバーを直撃したのが唯一の決定機だった。

 スコットランドも序盤にスコット・マクトミネイのシュートをGK鈴木の好守で事なきを得ていたので、チャンスメークに関しては五分だったといえる。

後半のコンビのほうが力を発揮していた

サッカー日本代表 三笘薫
途中出場から違いを見せた三笘薫【写真:田中伸弥】

 ビルドアップとハイプレスの攻防でやや優位だった日本が、そのアドバンテージをチャンスメークに結びつけるようになったのは後半の選手交代から。

 67分、上田の絶妙の競り落としから三笘、伊東とつないで、伊東がドリブルで揺さぶってDFをかわしてシュート。GK鈴木のロングフィード、上田のポストプレー、三笘のパスと伊東の突破。個の上手さ、強さをつなげて質の高さで決定機を作り出す。

 69分、またも上田のフリックから三笘が拾って左サイドの中村へ。中村に対しては2人が対峙していたが、藤田譲瑠チマのランニングで少し隙が生まれる。

 三笘がそのスペースへタイミングよく走り込むと、中村がマクトミネイの足の間を通すパス。三笘のシュートはゴールカバーのDFにクリアされたが見事な連動だった。

 78分からは鎌田が1ボランチ、三笘と堂安の2シャドーに上田、塩貝の2トップという大胆な攻撃布陣を採る。



 守備時のバランスの悪さがリスクになっていたが、塩貝が脚力を活かして守備を助けて帳尻を合わせる。攻めては鎌田が卓越したポジショニングと配球を見せて不可欠の存在であることを示した。

 84分、伊東のゴール。後半はスコットランドの攻撃を散発に抑えての1-0となった。

 前半から攻守に優位性はあったが、アタッキング・サードの質がやや不足。選手交代でそこが変化した。チャンスメークのカギになるサイドに三笘&中村、堂安&伊東のコンビを据えたことでの質的変化である。

 南野拓実と久保建英を欠いている今回の2試合は、シャドーの適任者を探すのが課題の1つ。前半は鈴木、佐野。後半は三笘、堂安がプレーしたが、後半のコンビのほうが力を発揮していた。中村、伊東との入れ替えができる強みもあっただろう。

 フィールドプレーヤー20人を起用し、最少得点とはいえ完封勝利。イングランド代表戦に向けての準備は整っている。

(文:西部謙司)

【著者プロフィール:西部謙司】
1962年9月27日生まれ、東京都出身。学研『ストライカー』の編集記者を経て、02年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、ヨーロッパサッカーを中心に取材。現在は千葉市に住み、ジェフ千葉のファンを自認し、WEBスポーツナビゲションでは「犬の生活」を連載中。サッカーダイジェスト、フットボリスタなどにコラムを執筆中。『ちょいテク 超一流プレーヤーから学ぶちょっとスペシャルなワザ』監修(カンゼン)、「サッカー右翼サッカー左翼」(カンゼン)、近著に『戦術リストランテⅣ』(ソル・メディア)、「ゴールへのルート」(Gakken) 、共著の『サッカー日本代表の戦術が誰でも簡単に分かるようになる本』(マイナビ)、『FCバルセロナ』(ちくま新書)がある。

【関連記事】
英国人が見た日本代表対スコットランド戦「前田大然のパス精度はまだ…」「三笘薫が入って…」「11人交代は記憶に…」
サッカー日本代表 スコットランド戦 海外メディアの反応まとめ
【動画】サッカー日本代表、鈴木彩艶がスコットランド戦でスーパーセーブ

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!