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コラム 15時間前

世界的にもあまり例のないライン。サッカー日本代表はいかにしてイングランド代表を攻略したのか【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 フリーライター/戦術ライター photo by Shinya Tanaka, Getty Images
円陣を組むサッカー日本代表
イングランド代表と対戦するサッカー日本代表【写真:田中伸弥】



 現地時間3月31日、サッカー日本代表はアウェイでイングランド代表と対戦し、1-0で勝利した。同国相手の勝利は史上初の快挙で、イングランドがアジアのチームに黒星を喫するのも初めてだった。欧州遠征を最高の形で終えた日本代表はどのような収穫を得て、何を課題したのか。攻守に一長一短ある。(文:西部謙司)
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“偽9番”を機能させなかった守備

サッカー日本代表の三笘薫
自身のプレスバックから決勝点を奪った三笘薫【写真:田中伸弥】

 イングランド代表は絶対的レギュラーであるハリー・ケインとブカヨ・サカ、さらにデクラン・ライスを欠いていた。

 その代わり、予選を欠場していたコール・パーマーとフィル・フォーデン、2人の「10番」を先発させている。日本代表の武器であるプレッシング対策でもあった。

 5-2-3でミドルゾーンに守備をセットする日本に対して、イングランドはコビー・メイヌーとエリオット・アンダーソンの「6番」を2人、パーマーとフォーデンの「10番」も2人配置した。

 日本の前列3人はイングランドの「6番」を背中で消そうとするが、「6番」が2人いるために消し切れない状況が生じる。



 そこへ鎌田大地か佐野海舟をプレスさせ、彼らと3CBの間にパーマー、フォーデンが潜り込む。そこから一気に攻略というプランだった。

 しかし、必ずしもトーマス・トゥヘル監督の狙いどおりにいかなかったのは、日本のブロックが非常にコンパクトだったからだ。

 パーマー、フォーデンに縦パスが差し込まれる機会は何度かあったが、日本のプレスバックは速く、決定機を作らせない。

 23分の決勝点は三笘薫がパーマーからボールを奪ったのが起点だった。

世界でも稀なシャドーとウイングバックの互換性

サッカー日本代表の中村敬斗
左ウイングバックとして1アシストを記録した中村敬斗【写真:Getty Images】

 三笘→鎌田→上田綺世とワンタッチで密集化する抜け出してカウンターをセット、三笘が左サイドの中村敬斗へ展開。最後は中村の針の穴を通すようなラストパスを三笘が冷静に蹴り込んだ。

 前半のイングランドの保持率は66%。しかし、バーに当たったアンダーソンのミドルシュート以外に大きなピンチはなく、ミドルゾーンでの守備から移行するハイプレスも効果的で度々高い位置で奪って攻め込み、日本のペースといっていい45分間だった。

 後半開始から60分までは日本の勢いが増すことが多い。

 この試合もそうで、佐野海舟の鋭い読みとアジリティによるパスカット、鎌田の落ち着いたゲームメイク、堂安律や三笘、中村、伊東純也の個人技と連係でフィールドを制圧していた。

 60分、イングランドはパーマーとフォーデンを引っ込め、右ウイングに起用されていたモーガン・ロジャースをトップ下へ移動。予選時のオーソドックスで手堅い戦い方に戻す。

 日本の攻勢はこのタイミングから収束に向かい、ローブロックで耐える流れになった。

 機動力と献身性によって非常にレベルの高い日本の守備だが、それだけ消耗も大きい。



 これはどんなチームでもそうだが、60~70分あたりでインテンシティは落ちる。

 ローブロック化してからは鈴木淳之介、田中碧、菅原由勢を投入して耐性を高めた。

 引いた日本に対して包囲戦のイングランドは得意のCK、FKからゴールを狙う。84分にCB2人を交代。空中戦が強力なハリー・マグワイア、ダン・バーンはセットプレーで脅威だったが粘り強い守備でしのぎ切った。

 60分以降は押し込まれ、セットプレーから決定機も作られた。GK鈴木彩艶の好守もあって無失点に抑えたとはいえ、あそこまで押し込まれてしまったのは課題だろう。

 ただ、押し込まれた時間帯の堅守も含め、ミドルゾーンでのコンパクトな守備、ハイプレスへの切り替えもスムーズだった。

久保建英、南野拓実の負傷欠場で空席となったシャドーのポジションについては三笘、伊東が埋め、ウイングバックの中村、堂安とのコンビネーションも良く、シャドーとウイングバックの互換性もある、世界的にもあまり例のないアタックラインが形成される大きな収穫を得た。

 イングランドが核になる選手を欠いていたとはいえ、FIFAランキング4位で予選全勝、優勝候補の一角を敵地で倒したのは快挙といえる。

(文:西部謙司)

【著者プロフィール:西部謙司】
1962年9月27日生まれ、東京都出身。学研『ストライカー』の編集記者を経て、02年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、ヨーロッパサッカーを中心に取材。現在は千葉市に住み、ジェフ千葉のファンを自認し、WEBスポーツナビゲションでは「犬の生活」を連載中。サッカーダイジェスト、フットボリスタなどにコラムを執筆中。『ちょいテク 超一流プレーヤーから学ぶちょっとスペシャルなワザ』監修(カンゼン)、「サッカー右翼サッカー左翼」(カンゼン)、近著に『戦術リストランテⅣ』(ソル・メディア)、「ゴールへのルート」(Gakken) 、共著の『サッカー日本代表の戦術が誰でも簡単に分かるようになる本』(マイナビ)、『FCバルセロナ』(ちくま新書)がある。

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【了】

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