イタリア代表がFIFAワールドカップ(W杯)への出場を逃した。これで3大会連続となる。世界の頂点に立った20年前からは、考えられない事態だ。アッズーリは、なぜここまで落ちてしまったのか。その原因は、メディアにもあるのかもしれない。(文:佐藤徳和)[2/3ページ]
「なぜイタリアはサッカーだけ勝てないのか?」
自国開催となった冬季五輪では、30ものメダルを獲得した。それまでの最多であった1994年リレハンメル大会の総数を10も上回る活躍を遂げた。
金メダルに至っては、イタリア史上最多の10である。
ラグビーは、史上初となるイングランドを破って凱歌を揚げ、WBC(ワールドベースボールクラシック)では、史上初の準決勝進出を果たした。
もっとも、イタリア生まれのイタリア人は、3人であったが、それでも、自国でマイナースポーツであるベースボールを大いに盛り上げ、ジョルジャ・メローニ首相もベースボールのアッズーリを国会の場で祝福した。
テニスのヤニク・シンネルはマイアミ・オープンを制し、ATPランキングで首位に肉薄している。
キミ・アントネッリは、イタリア人として20年ぶりに勝利したF1レーサーだ。2連勝を収め、ルイス・ハミルトンの22歳4カ月6日の記録を大幅に上まわり、わずか19歳7カ月4日で史上最年少チャンピオンシップリーダーとなった。
グラヴィーナは敗退後の会見で、記者からこう質問を受けた。
「なぜイタリアは他のスポーツで勝っているのに、サッカーだけ勝てないのか?」
するとは彼はこう言い放った。
「サッカーはプロスポーツだが、他のスポーツはアマチュアだ。公平な基準で比較しようではないか。他の競技は、ウィンタースポーツのように『国家のスポーツ』なのだ。アリアンナ・フォンターナを除けば、選手は皆、国家公務員なのだから」
全く筋の通らない回答で、自ら無能さを露呈してしまった。
この後、メダリストから容赦のないバッシングを浴び、さらには、イタリアのスポーツ相アンドレア・アボーディが、「私は直接、彼に辞任を求めるつもりだ」と辞任を勧告。追い込まれたグラヴィーナは、自ら招集した総会の場で、会長職を辞任を表明した。
また、イタリア代表の代表団団長を務めていたジャンルイージ・ブッフォンも辞した。会長選はW杯開催期間中の6月22日に実施される予定だ。
「W杯でイタリアを見ることなく成人する若者たちが現れる」
3度目の蹉跌をメディアはどのように伝えたのか。
スポーツ紙『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』のルイージ・ガルランド記者は、このように綴った。
「予選敗退はもはや予測不能な大惨事としての意味を失い、常態化しつつある。イタリアは3大会連続でサッカーのW杯に出場しないことになる。次にその話題が出るのは2030年、その時には最後の出場から16年が経過している。史上初めて、W杯でイタリアを見ることなく成人する若者たちが現れることになる」
「我々の長い“砂漠の横断”は終わったかに見えた。だが、長らく暗い森の中で道を失っていたバストーニが、不用意にも我々を10人にしてしまい、地獄へと突き落とした。しかし、我々は、生き延びるために必要なすべてを守備の伝統から引き出した。優れたGK、堅固な防壁である。
我々はPK戦までたどり着き、素晴らしい(マルコ・)パレストラや闘志あふれるピオ(・エスポージト)のプレーに、1978年の(アントニオ・)カブリーニやパオロ・ロッシを思い起こさせる郷愁をかき立てられた」
「そして最後は、20年前に我々を世界王者にし、2021年に欧州王者にしたPK戦に望みを託した。だが今回は起きなかった。我々に残されたのは、涙を流すガットゥーゾとその選手たちの姿を見ることだけであった。
誤審か? 我々自身のミスの方が多かった。真実は、ボスニアの方が強かったということだ。そして、どう改善すべきか――技術の改善、オラトーリオ(教会付属の児童施設)の復興――を考え続けることにも疲れている。第三の“apocalisse”は、最悪である」
敗退から一夜明け、ナポリのアウレリオ・デ・ラウレンティイス会長が、ラジオ局『Radio Crc』のインタビューで、早速改革案を示した。
「我々は常に、試合数が多すぎて選手を酷使していると言い続けている。現在も20チーム制に固執しているが、もし16チーム制に戻し、サウジアラビアで開催されるようなスーペル・コッパを廃止すれば、選手を保護できるはずだ」
そして、FIGCの次期会長には、イタリア・オリンピック委員会(CONI)の元会長であるジョヴァンニ・マラゴーを推した。
2025年6月26日まで12年にわたりCONIの会長を務め、第25回冬季オリンピックの組織委員会では「ミラノ・コルティナ2026財団」の会長を担った人物だ。
責任はイタリアメディアにもある
「彼は常に最善を尽くすことに長けた偉大なプロフェッショナルであり、それを証明し続けてきた。残念ながら、我々の周囲には、与えることの大切さを理解せず、ただ受け取ることだけを望む者が多すぎる。
もしマラゴーがイタリアサッカー界の舵取りを担えば、間違いなく瞬く間に立て直すだろう。明日からでも彼が始動すれば、私の考えでは、2年以内に我々イタリアは再び強豪に返り咲けると思う」
ローマ出身で元フットサル選手のマラゴーの就任の是非はさておき、16チーム制にも課題がある。
そもそも、デ・ラウレンティイス自身、2024年に18チーム制への移行案に対し、16のクラブと共に反対投票を投じていた人物である。16チーム制にすれば、過密日程が緩和され、代表にあてられる日数が増えることは事実だ。
しかし、下位のチームには、クレモネーゼ、ピサSCといったイタリア人選手の多いチームが存在する。したがって、単にチーム数を削減するだけでは不十分であり、各クラブにおけるイタリア人選手の起用を増やす方策も同時に講じなければならない。
チーム数の削減とイタリア人選手の出場機会の確保は、不可分の課題として並行して進められるべきである。
「世界の破滅」が12年の間に3度もあってはならなかった。2018年の1度で十分であった。
その責任は、イタリア・メディアにもある。
イタリア代表の敗退が決まれば、どのメディアにもapocalisseの文字が踊り、FIGC会長の退任を一斉に叫ぶ。代表をどのように強化し、イタリア人選手をどう輩出すべきかという道筋も示さずにだ。
そして、時が経つと、イタリア代表の存在すら忘れ、移籍市場が近づくと、外国人選手の獲得に歓喜する。
「イタリア代表強化キャンペーン」のような連載企画も組めたはずだが、そのような継続的な試みは見られなかった。
