イタリア代表がFIFAワールドカップ(W杯)への出場を逃した。これで3大会連続となる。世界の頂点に立った20年前からは、考えられない事態だ。アッズーリは、なぜここまで落ちてしまったのか。その原因は、メディアにもあるのかもしれない。(文:佐藤徳和)[1/3ページ]
イタリア代表が3度目の悲劇に…
「世界の破滅」を意味する“apocalisse”がイタリアの各メディアの見出しを飾るのは、これで3度目だ。
イタリア代表は2018年、2022年に続き、2026年FIFAワールドカップ(W杯)欧州予選でも出場権を逃し、再起を図る中で再び奈落に突き落とされた。
かつて世界の頂点に立った強豪は、いまや3大会連続で本大会の舞台から姿を消すという、未曾有の低迷に直面している。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナのホームスタジアム、ビリノ・ポリェは、荒れ果てたグラウンド、老朽化したスタンド、そして、ゴール裏のマンションでは、発煙筒が赤々と焚かれている。まるで地獄絵図のようだった。
アッズーリは15分、モイス・キーンのゴールで先行。幸先の良いスタートを切ったように思われた。
ところが、41分、アレッサンドロ・バストーニが、アマル・メミッチを倒して一発退場。あろうことか、GKジャンルイージ・ドンナルンマが蹴ったゴールキックを相手選手に跳ね返され、そこからカウンターを受けたことが原因となった。
ドンナルンマの蹴ったフィードがセンターラインすら超えなかったにしても、あまりにも不用意なラインコントロールであり、たった一度のヘディングで背後のスペースを突かれ、決定的な局面を招いてしまった。
バストーニは、インテルでも3バックのセンターを務めることがあるが、本来は、左の一角(あるいは右)を主戦場とするプレーヤーだ。3バックの中央のポジションにはやや不慣れであったことは否めない。
しかし、セリエAのほかのクラブを見回してみても、3バックの中央で、統制を取れるイタリア人DFが、何人いるだろうか。
ウノゼロで逃げ切る力は今やない
3バックの左右を任されるイタリア人選手はいても、中央を不動のレギュラーとしてこなせる選手はいない。多くのクラブが外国人選手にこのポジションを託している。
残念ながら、それが今のイタリア人選手の置かれている現状である。
斯くして、残り時間を10人での戦いを強いられることとなったアッズーリだが、かつてであれば、ここからが彼らの真骨頂であった。
数的不利に陥ってもウノゼロで逃げ切る力を備え、時にはカウンターから追加点を奪い、勝利を決定づけることすらできた。
ところが、今のイタリア人にそのような力もメンタリティーも備わっていない。79分には、ハリス・タバコヴィッチに同点弾を喫した。
イタリアが戦っていた相手は、ブラジルでも、スペインでもない。ボスニアはFIFAランキング59位の北アイルランドよりも下位の65位。そのような相手にすら、数的不利とはいえ、逃げ切ることができなくなってしまったのだ。
その後は、ドンナルンマのセーブもあり、延長戦でもなんとか持ち堪えたものの、最後まで試合の主導権を引き寄せることはできず、PK戦の末に敗れた。
2014年大会以来、2度目のW杯本大会出場権を手にしたボスニアが歓喜に浸る中、イタリア代表のジェンナーロ・ガットゥーゾ監督は、公共放送『Rai』のインタビューに答えた。
ガットゥーゾは頑張った。では連盟は…
「選手たちは、あれほどの努力をしたにもかかわらず、このような敗北を受けるに値しなかった。10人になってからも我々は3度の決定機を作った。一方でボスニアは我々に対して決定的な脅威とはなっていなかった。しかし、これがサッカーだ」
さらに、少し涙ぐんだようにも見えながら、こうも語った
「辛い。W杯は我々にとって、家族にとって、そしてこの競技全体にとって必要なものだった。これほどの打撃は簡単には消化できない。この結果は不当だ。イタリアは全力で戦い、塹壕に踏みとどまり続けた。その姿には感銘を受けた。申し訳ない。自分にはやり遂げられなかった」
そして、去就については「今それについて話すことは重要ではない。パフォーマンスは評価するが、結果がこれでは辛い」と明言を避けている。
今は、ガットゥーゾがルチャーノ・スパッレッティの後任として適任であったか否かを論じる局面ではない。
むしろ、窮地に陥ったアッズーリを率い、限られた時間の中で指導に当たり、イタリア国内にとどまらず、イングランドや中東にも足を運び、精力的に視察と対話を重ねてきた。
なすべきことは果たしたと言ってよい。なお、4月2日時点でガットゥーゾは辞任を表明していないが、退任となる可能性は高い。
一方で、イタリア・サッカー連盟(FIGC)の対応はどうであったか。
ガットゥーゾが求めたトレーニングキャンプの開催には耳を傾けず、ガブリエーレ・グラヴィーナ会長は「W杯には行けると確信している」と、根拠に乏しい自信を示していた。
欧州予選後、本来であれば講じ得た対策があったにもかかわらず、それに着手しなかった怠慢の責任は重い。
サッカー以外に目を向ければ、イタリアはあらゆるスポーツが結果を出している。
