フットボールチャンネル

コラム 14時間前

サッカー日本代表「W杯優勝」発言の真意。遠藤航の本音と指揮官の矛盾「活を入れるつもりではないんですよ!」【連載:北中米W杯への道4】

サッカー日本代表の遠藤航と堂安律(2023年6月20日・ペルー戦)
2023年6月20日のペルー戦、サッカー日本代表の遠藤航と堂安律【写真:Getty Images】



 サッカー日本代表の主将に就いた遠藤航と森保一監督はともに、「W杯優勝」を口にした。堂々たる優勝宣言のようにも聞こえたが、遠藤の真意は違った。この連載では、サッカー日本代表を現地で取材し続けるスポーツライターのミムラユウスケが、FIFAワールドカップ26(北中米W杯)までの3年半に及ぶ日本代表の挑戦と苦悩を描き出す。(取材・文:ミムラユウスケ)[1/2ページ]
——————————

「活を入れるつもりではない」遠藤航の真意は…


2023年6月20日のペルー戦、サッカー日本代表の遠藤航【写真:Getty Images】

 「みんなに活を入れるつもりで言ったわけではないんですよ! カタールW杯前のことを振り返り、W杯以降の半年間も考えた上で、最終的にチームの雰囲気もふまえて、ああいう風に話しました」

 遠藤航の真意は、劇的な奮起を促すものではなかった。むしろ、代表という特殊な環境を冷静に見つめた上での、現実的な呼びかけだった。

 代表チームの難しさは「競争の激しさ」にある。本大会メンバーに選ばれるか否かは不透明で、毎回顔ぶれが変わる可能性が高い。若手もベテランも、今回初招集の選手も、前回落選した選手も、関係なく「今ここにいる全員が、W杯で結果を残すために行動せよ」というメッセージだ。


 「(本大会でメンバーに)入るか入らないかわからない選手も、代表に来たならば、W杯でチームとして結果を残すためにやらないといけない。初めて(メンバーに)入ったとか前回は入れなかったとか、若いとかベテランだとかは関係なく、日本代表が、どうやったらW杯で優勝できるのかを考えて行動していきましょう」

 遠藤は「W杯優勝」をスローガンとして掲げたわけではなく、「チーム全体が優勝を本気で目指す姿勢で行動していこう」と呼びかけたのだ。

遠藤航、キャプテンとしての最大の功績

日本代表キャプテンに任命された遠藤航
日本代表キャプテンに任命された遠藤航【写真:Getty Images】

 JFAの長期目標「2050年までにW杯優勝」も念頭に置きつつ、まずは目の前の2026年W杯で結果を出すための現実路線を強調している。

 この考え方は、遠藤自身の経験に根ざしている。シュトゥットガルトで2シーズン主将を務めた遠藤は、言葉で熱く鼓舞するタイプではない。ドイツ人選手が円陣で熱弁を振るう中、遠藤は黙々とデュエルで体を張り、行動で信頼を築いてきた。代表でも同じだ。長谷部誠や吉田麻也のような「まとめ役」ではなく、必要時に背中で示すリーダーシップを追求している。

 三笘薫は遠藤の知性と落ち着きを評価し、鎌田大地は「彼らしい」と頷き、堂安律も共感を示すなど、チームメイトからも好意的に受け止められていた。

 そして、ここから北中米W杯に向けた日本代表の目標は明確に「W杯優勝」となり、世間に認知されていくことになる。ただ、その背景には見逃されがちなテーマがあった。

 今一度、遠藤のスピーチを振り返ってほしい。彼は、スピーチを以下のように締めくくっている。

 「日本代表が、どうやったらW杯で優勝できるのかを考えて行動していきましょう」


 これこそが遠藤の言葉の本質である。まず、「W杯優勝」というのはノルマではなく、大きな目標である。そして、何より大きいのは、遠藤が「W杯優勝」という目標を掲げることで、チームの行動基準を設定したところにある。

 つまり、日本代表選手は「どうやったらW杯で優勝できるのかを考えて行動」するべきだという指針だった。

 遠藤が当時、そこまで明確に狙いを持っていたというわけではないだろう。とはいえ、この言葉は、日を追うごとに選手たちのなかで大きいものになっていった。そして、いつしか、何かを判断したり、語ったりするとき選手たちは自然と「どうやったらW杯で優勝できるのかを考えて」行動するようになった。

 「W杯優勝を目指す選手として、ここで満足していいのか」

 「W杯優勝を目標にする以上、もっと努力を積まないといけない」

 そして、その結果、多くの選手たちは同じ方向を向いた。筆者が日本代表の取材を継続するようになったのは2010年南アフリカW杯からだったが、大会直前の時期をのぞき、チーム全員がこれほどまでまとまっているチームは記憶にない。それは、みんなが「W杯優勝」という同じ目標を見て、そのために何をすべきかを考えて行動するようになったからだろう。遠藤のキャプテンとしての最大の功績はそこにあったのだということは、決して忘れてはならない。

森保一監督が選手にかけた言葉「みんなに本当に失礼だと思った」


FIFAワールドカップカタール2022、クロアチア代表にPK戦で敗れた日本代表【写真:Getty Images】

 なお、この合宿での3つ目のトピックは、森保一監督の“謎”である。

 3か月前の時点で選手たちに向けて彼が以下の様に語ったのは、当時のJFAのYouTubeチャンネルからもしっかり確認できる。

 「クロアチア戦のあとに一番思ったこと。もっと俺の想いを強く持っておかないといけなかった。みんなの悔しさ、『やりきって、足りなかった』という悔しさではなかったでしょう? 違う? 勝てていたんだ。

 あれは勝っていたら、(勝てれば準々決勝で)ブラジルともできたんだ。親善試合もやって、しっかり手応えがあって。そうしたらベスト4、決勝までいくか、3決(3位決定戦)をできる。今までのルールだったら7試合全部やれるでしょう。


 次(2026年大会)の……レギュレーションだったら、8試合、日本は絶対にできるでしょ。俺は本当に試合の時に思ったし。悔しい思いもあったけど、みんなのポテンシャルを見たときに、もっと上げていける、そこは絶対に超えていけると本気で思ったし。思わないといけなかったし。

 そんななかでやっていかないとみんなに本当に失礼だと思ったし、世界のトップトップでやって、世界と同じ基準のなかで、目線のなかで戦っていくということをみんながやっているなかで、本当に目指したいなと(思った)。

 だから、さっきも言ったけど、メディア上で聞いているかもしれないし、世界一と言っているし、そこを見据えている。ただ、現実はちゃんと見据えて……」

 ここまで読むと、森保監督はこの時点で、W杯優勝を本気で目指すと主張しているように受け取れる。

 しかし、後に監督本人が以下の様に証言しているのだ。読売新聞オンラインでも、その様子が確認できる。

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!